『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』という本が今、爆発的に売れているそう。
引きのありすぎるタイトルです。このタイトルを思いついた人は天才だと思います。
著者は文芸評論家の三宅香帆さん。三宅さんがゲストで登場したPIVOTの動画を見て、本の中身をさらりと知ることができました。
映画『花束みたいな恋をした』(2021年)の菅田将暉さん演じる「麦くん」みたいな人に読んでほしい、麦くんにあてた本であるというのが裏テーマ、といった三宅さんのお話はとても興味深かったです。
社会人になった麦くんが本をはじめとするコンテンツを味わうエネルギーを徐々に失っていき、無心でスマホゲームに没頭する画を覚えている人も少なくないと思います。
三宅さんがとても戦略的に、そして本を読みたくても読めない人を優しく応援する気持ちで、本書を書き上げたのだろうなと想像しました。
読書術の本ではなく、労働史と読書史の2軸で展開する、これまでにない切り口も話題です。
読書ができないのは「時間がない」「忙しい」「ほかに魅惑的なコンテンツが多すぎる」などの理由ではなく、「現代の社会構造に無理があるから」といった論が展開されているといいます。
面白そう。ただ、今はほかに優先的に読みたい本があるため、まだ手を伸ばす時期ではありませんが、いずれ読みたいと思い、ほしいものリストに追加しました。
ただ、「本が読めない」というのは、読みたいのに読めない人にとって大きな課題です。
自分ひとりで社会構造を変えられるわけでもなく、目下、自分がコントロールできる範囲で行動を変えるしかありません。
私も本が好きな方なのに、本を読む時間を取れないというか、取っていない時期がありました。
読みたい本を見つけたら買っているのに、1日に1ページも読まない日が続いていると気づいたとき、「時間はあるはずなのに、いったい私は何に時間を使っているのだろう」とハッとしました。
当時、見直したのは「不必要な時間」です。そこで、自然と本に手が伸びる仕組みを整えることに。
まず、私にとって不必要な時間はSNSをこまめにチェックする時間でした。
インフルエンサーでもなく、SNSから1円も稼いでいないのだから、SNSに時間を投下する意味はほぼないのに、と冷静になったのです。
そこで、スマホからXとFacebookのアプリを削除し、閲覧は1日に朝・昼・夜の3回までPCからと決めました。
そうすれば、移動中は自動的にバッグに入れた本を読む行動をとることになります。
さらに、Google カレンダーに「(書籍名)読む」と1セット30分単位で、読書予定を入れました。
難易度の高い本だと、それくらいの短い時間で集中する方が、気持ちもラクです。
そして、予定として組み込んでいるからこそ、スケジュールとして遂行するのが当たり前にもなります。
ほかにも、「カフェに寄って1時間は読書をして帰る」も取り入れました。コーヒー代を払っているので、その金額分は読書という有意義な時間にあてよう、というマインドも生まれます。
とくに、ふたつ目の「読書を予定化する」は有効でした。ミーティングの予定が入っていれば、当然サボらずに参加するわけですから、読書予定も同じように対応します。
小説や仕事の資料として読むモノは別ですが、「時間があるときに読めばいい」では、私の場合、読書にたどり着きづらくなっていました。
だからこそ、読書を日々の予定化するのが正解だったのです。読みたい本がありすぎる今、さらに読書の時間を増やしていきたいところです。
Text / Sonoko Ikeda