『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』を読んで。

「素朴な生活を見せてくれる本」が好きです。

華美な贅沢とは対極にある、慎ましやかな在り方に憧れています。

自分にはまだ物欲があるようで、数万円のモノを躊躇なく買うこともあります。しかし「いつかは“そっち”に行きたい」と思っているのです。

少し前に『財布は軽く、暮らしはシンプル。74歳、心はいつもエレガンス』を読みました。

74歳のエッセイスト小笠原洋子さんが、これまでに得てきたシンプルな生活の知恵を惜しみなく伝える1冊です。

根っことなるメッセージは、物質的な豊かさではなく、心の豊かさを追求することの大切さ。

好きなモノだけに囲まれたシンプルな生活を送りたい。読後はそんな気持ちが芽生えると思います。

シンプルライフの達人ともいえる小笠原さん。本書には日々の暮らしで実践するアイデアや工夫が詰め込まれています。

どれも無理したり、がんばりすぎたりすることなく、日常の延長でできることばかりなのがうれしいところ。

その哲学は少ないモノで豊かに暮らすミニマムな姿勢にあります。必要最低限のモノだけで生きることこそが、本当の意味での贅沢なのだなとも思わされます。

モノを減らすことによって、掃除や整理整頓が楽になり、余計なストレスから解放されると同時に心にゆとりが生まれ、日常生活がより充実したものになるのは理解できるところ。

また、モノを減らすことは、環境にも優しく、持続可能な生活を送る一歩にもなります。小笠原さんが提唱する「ケチカロジー」です。

本書のもう一つの大きなテーマ「心のエレガンス」にも触れておきます。余計なモノを削ぎ落とした暮らしの中で、小笠原さんは自分との対話を怠りません。

対話は本書のような書籍やエッセイ、日記などの書き物だけでなく、日常で内なる自分に問いかけることも含みます。

簡素な暮らしの中で、静かに自分を見つめ、自身の内側にある声を聴く生き方。

いつかはこの境地に至れるのでしょうか。いや、そこへ辿り着きたいと考えながら、今必要ではないモノを手放し始めています。

Text / 池田園子