働いていても読書の時間をキープするためにしていること

本を読めなくなってきたと悩む人が増えているのか、そのような人に向けた本をよく見かけます。
かくいう私も読書時間が年々減ってきているひとりで、気になる本リストには以下の2冊が入っています。
なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(三宅 香帆)
読書は鼻歌くらいでちょうどいい』(大島 梢絵)

私が本を読むのは、移動時間と寝る前にほんの少し。
仕事や家事育児に追われ、読書時間はなかなか増やせません。
その代わり、少しでも読書しやすい環境をつくるため、意識していることがいくつかあります。

本選びのハードルを下げるために図書館へ

普段からものを増やしたくない気持ちが強いため、本も含め買い物で失敗したくありません。
失敗したくないどころか、運命の一冊に出会いたい! と気合いを入れすぎて本を選べないことも数知れず。

その点、図書館は本を無料で借りられるため、選ぶハードルがぐんと低くなります。
気になる本があれば、随時図書館のサイトから数冊まとめて予約し、少し読みます。
読了目的ではなく、あくまで試し読み。立ち読みの延長です。
面白ければ最後まで読み進め、さらに所有したいと思ったら購入へ。

書店での出会いも大切にしていますが、図書館の利用はスペースと時間の節約になります。

翻訳者で本を選ぶ

手持ちの本の配分は、かなり偏っています。
小説&エッセイ6:料理本等実用書2:仕事・勉強用2

小説やエッセイが好きですが、読みたいものが溢れているため選ぶのに時間がかかります。
基本的には、前述したように気になる本を片っ端から図書館でまとめ借りしますが、私の場合翻訳者で選ぶことも多いです。

元神戸市外国語大学学長であり、スペイン文学やラテンアメリカ文学翻訳者の木村榮一さんがそのひとりです。
ガブリエル・ガルシア=マルケスやフリオ・コルタサルの翻訳もされていますが、私が彼の翻訳の虜になったきっかけは、フリオ・リャマサーレスの『黄色い雨』。

『黄色い雨』は、廃墟になりかけている村の最後のひとりとなった男性が、生きているのか死んでいるのか判然としないまま進む物語。
常に死と孤独がまとわりついている重苦しい内容ですが、木村さんの言葉選びがあまりに美しく、物語に透明感すら感じます。
今では木村さんの言葉に触れたくて、本の中身を見ずに購入するほどのファンになりました。

本を選ぶのに迷ったときは、好きな海外文学・絵本の翻訳者の別の本(エッセイ含む)を読むと、新たな出会いや発見につながることがあります。

短い読書時間でも満たされる、衣替えならぬ棚替え

本は定期的に売ったりあげたりして整理しているつもりですが、約300冊あります。
ほとんどは押入れ内に設置した棚や収納ケースに入れ、料理本はキッチンの棚へ。
比較的新しい本や雑誌は、リビングの片隅に重ねています。

家のあちこちに本を収納していますが、ベッドサイドの一軍本棚には季節に合う本を並べています。
以前エッセイで書いたように、私は服をたくさん持っていないため衣替えをしません。
しかし、本の棚替えは毎シーズンいそいそと取り組みます。

ちらほら桜の話題が出るようになったら、新生活にまつわるエッセイや、人間味のある登場人物のやり取りに触れられる本『コーヒーと恋愛』(獅子 文六)などを中心に。

気温の高さにうんざりするようになってきたら、SF小説やホラー、岩波少年文庫『トムは真夜中の庭で』(フィリパ・ピアス)などを読み現実逃避します。

肌寒くなり食欲が増す季節は、食エッセイや料理本『バスクの修道女 日々の献立』(丸山 久美)など眺めながら、次は何を作ろうかと考えてニヤニヤしたり。

床の冷たさに身震いする頃は、冷たく静寂な世界で淡々と描かれた物語『おわりの雪』(ユベール・マンガレリ)や星野道夫さんのエッセイなどを読み、遠い異国の地へ想いをはせます。

布団の中から手を伸ばし、眠りにつくまでの間に読む季節を感じる本。
たくさん読まなくても、文中の写真を眺めるだけでも、満たされて心地よい眠りにつけます。

決して読書家ではない私の、本との付き合い方。
ものは増やしませんが、時間や場所を越えた物語の記憶は、これからも増やし続けていきたいです。

Text / Asako Yano

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