神戸と宮崎を結ぶ「宮崎カーフェリー」に乗船して宮崎まで行ってきました。
7年ほど前に一度訪れて宮崎の南国的魅力を知っていましたが、福岡で暮らしているときは近いようで遠く、行く機会をつくれなかったのが心残りに。
今回の主目的は「宮崎でフルーツを食べること」。それ以上に「フェリーでの旅を味わうこと」がありました。
宮崎カーフェリーが販売する旅行商品「フェリー&ホテル ビジネスパック」のチラシを大阪市内のビルでたまたま見つけて持ち帰り、フェリーでの旅を意識したのは数ヶ月前。ようやく余裕ができるな、というタイミングで予約したのでした。
結論から言うと、フェリーでの旅はとても良かったです。改めてその魅力を何度かに分けて綴りたいほどですが、今日は「人間らしい時間を過ごせること」をプッシュすることとします。
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大前提として、約半日かかる神戸−宮崎の移動中、海上では通信がほぼできなくなります。
船内Wi-Fiはあってもほぼ機能しません。PCやスマホから自然と離れる時間ができるわけです。
しかし、むしろこれこそが魅力です。それらを使えなくなる代わりに、生まれることがあります。人との交流です。
往路では船内レストランで「フェリーめし」を楽しみ、復路は宮崎市内で買った飲食物を持ち込み、デッキのテーブルで食べていました。
隣に私と同じようなひとり客(少し年上の男性)がいました。クーラーボックスからスーパーで買ったと思われる惣菜や刺身のパック、お酒を出して食事をされていて、一目で「フェリー通だ」と分かる感じ。
フェリー初心者として、「フェリーの楽しみ方」について詳しい人に話を聞きたいなと思っていた私にとって最良の人材。
男性が刺身パックを手にとってラベルを眺めていたとき、「どこで買えるんですか?」と尋ねてみたのでした。
その質問をきっかけに、共有スペースの電気が暗めに切り替わるまで、おつまみをシェアしたり、お酒をいただいたりしながら、なんと2時間も会話していたのでした。
目論見通り、仕事でさまざまな場所へ移動する目的で、各地へ向かうカーフェリーを長年利用している、フェリー事情に詳しい人物でした。
フェリー会社による違いやフェリーめしの変遷、通る海によっての揺れ方の違いなど、フェリーに関するあれこれを聞けたのはもちろん、その方のお仕事や師匠、ご家族、趣味の話まであっという間です。
その方とも「フェリーの大きな魅力のひとつは電波が通じないこと」といった見解で盛り上がりました。
その魅力を生かして、フェリー会社はいろいろなイベントを仕掛けられる、という話も自由にしたのでした。
その日は夏休み期間中ということもあり、ファミリー層も多く乗っていて、子ども向けイベントが開催されていました。
私たちは会話優先でイベントを見に行きませんでしたが、放送を聞く限り、次は一年後に開催されるとのこと。夏休み特別イベントなのでしょう。
例えば大人向けには、綺麗でちょっと豪華な部分もある船内をフルに使って
・大人のかくれんぼ大会
・大人の運動会
・社交ダンスレッスン(一晩かけて特定のダンスをマスターするスパルタレッスン。下船タイミングには踊れるようになっている)
など、ありではないか? と。
イベントだけではなく、12時間暇にする人もいるわけなので、マッサージやネイル、占いなどの先生たちが乗船してサービスを提供し、売上の何割かをフェリーが取ればいい、なども。
さらに、恋活や婚活がしたい人々を集めてこのフェリーに乗せて「あとはそれぞれでがんばろう」とするだけで、12時間の船旅をするうちに自然と仲良くなる相手は出てくるのではないか? なんてことも思い、提案しました。
(後で調べてみると、数時間程度のモノもあれば、1週間近いクルーズで婚活イベントを行うケースもありました。しかし、そういった「お膳立て」の必要なく、デッキに出て各々食事していれば、自然と会話する流れになりませんかね? だってスマホも使えないんですよ)
独身で恋愛や結婚がしたい人には、フェリーで過ごす移動のための半日が、出会いを獲得するきっかけの場になると思います。
電子機器類に頼れず、自分自身で勝負するしかない場です。ごく自然と自分らしさを出せるというか、出さざるを得ない場。
そんな話をいろいろして、とにかく楽しかったなと今振り返って思うのでした。フェリー会社に提案しようかな。
Text / 池田園子