玄米は土台、パンは彩り。

​​玄米が好きで、普段の主食は玄米にしている。でも、ほんとのところは、パンも大好き。ふわふわした食感、香ばしい匂い、噛むたびに広がる小麦の風味は、玄米とはまた違った魅力を持っている。ただ、栄養素のバランスを考えると、日常の食生活は玄米にしておきたい。

でも、だからこそ、1~2週間に一度の「パンの日」は特別な贅沢になる。選ぶのは材料にこだわりがあり、作り手の愛情が感じられるパン。たとえば、全粒粉のカンパーニュや無花果、ナッツが練り込まれたボリューミーなパン。その日の心と身体が欲するパンに出会ったら、迷いながら数個選んで買って帰る。

パンを食卓に並べるときのワクワク感は、子どもの頃のおやつの時間を思い出すかのようだ。玄米とはまったく違う非日常の感覚に包まれている。玄米が日々の体を支えてくれる「地に足のついた存在」だとすれば、パンは「空に舞い上がる一瞬の喜び」だ(食べ終わるのも一瞬……涙)。

そんなパンの日は、夕食につくる「ぎゅうぎゅう焼き」によってさらに特別な日になる。ぎゅうぎゅう焼きは村井理子さんが自著『村井さんちのぎゅうぎゅう焼き』で紹介している、たっぷりの野菜や肉をオーブンでじっくり焼き上げる一品で、その香ばしさが食卓を華やかにしてくれる。

温め直したパンと、うまみの凝縮した肉や魚、野菜、フルーツ(バナナを焼くこともある)を一緒にいただく瞬間、豊かな味わいが広がる。さらに、横には赤ワイン。深い果実味のあるワインが、パンとぎゅうぎゅう焼きの風味を一層引き立て、贅沢なひとときに。

パンの日は「自由」を象徴する時間でもある。玄米に縛られているわけではなく、時には好きなものを食べる。健康のために普段は節制しているけれど、その一瞬の解放感は何にも代えがたい。もうひとりの自分が「たまには良いんじゃない?」とささやく声が聞こえる。

玄米もパンも大切な存在。でも、パンは時々でいい。それくらいがちょうどいい。自分の身体にやさしくしながらも、心を満たす贅沢を味わうこともある。そんなバランスを取ることが、私の日常に彩りを与えてくれる。パンとぎゅうぎゅう焼き、赤ワインが揃う夕食、そのひとときによそ行きの幸せを感じる自分がいる。

Text / 池田園子