ホテルじゃなく、友達の部屋で

友達の家に泊まらせてもらう楽しさを、あの夜ほど強く感じたことはない。旅先でホテルではなく、地元の友達に泊めてもらうという選択は、心の温かさと何気ない日常が織り交ざった特別な体験だった。

滞在先を考えるとき、ふと「ホテルじゃなくて、彼女にお願いしてみようかな?」と思い立った。再会して一緒に旅をしたとき、「今度地元に帰る機会があったら、うちに遊びに来てね」と言ってくれた友達。

彼女に「よかったら泊まらせてくれない?」と伝えた瞬間、こちらが驚くほど喜んでくれて、「スキンケア何も持ってこなくていいよ。私の使って」「布団もあるよ」「朝ごはん作ろうか」とまで言ってくれた。心がじんわりと温かくなる。

その瞬間から、ただの滞在が「特別な時間」へと変わったのだと思う。彼女らしいセンスが随所に光る素敵な部屋に入ると、そこにはホテルにはない温もりと居心地の良さがあった。

スキンケアを一式借りることになり、それが小荷物と楽しい体験を叶えた。親切に甘えてスキンケアも一式借り、馴染みのないテクスチャーにワクワクしながら、友達の愛用品に触れるのも楽しい。

夕食は私が感謝を込めて買ったものだったけれど、それよりも友達の城で友達と一緒に食べることの方が何倍も価値があった。彼女が手際よく朝ごはんを用意してくれた翌朝も、ひとり暮らしを楽しむ人の豊かな時間を感じ取れて心地よかった。

完全にひとりになれるホテルも魅力的だけど、友達の家で過ごすあの独特の快適さと温かさは、どんなホテルにも真似できない。旅の楽しみが「場所」から「人」にも向くようになった。次回の遠出も、OKしてくれる友達がいるなら、私はホテルではなく友達の家に泊まりたいと思う。お礼は夕食と気の利いた手土産でかろやかに。

Text / 池田園子