5年前、私は悶々とした恋愛をしていました。久しぶりに使いかけのノートを取り出し、開いてみたところ、そこには当時の私が残した記録があり、日々ネガティブな感情を募らせていたことを思い出しました。
懐かしい気持ちでページをめくってみると、驚くほど具体的な思考の記録が、見開き2ページに渡ってびっしりと書かれていました。
まず目に入ったのは「なぜ〇〇さんと付き合っているのか(メリット)」という項目。5つの理由が並んでいましたが、「メリット」と記載している時点で純粋な恋愛感情ではないように感じます。たとえば「恋人がいるという状態でいたい」「〇〇業界の裏話が聞ける」「地方に行ったときに泊まれる」など、相手の人間性よりも機能面を評価していたことが読み取れました。さらに「(これらの利を得るにあたり)恋人が〇〇さんである必要はない」と自分で補足している点にも苦笑せざるを得ませんでした。
続くのは「不満を感じている点(デメリット)」で、10個ほどリストアップされていました。そのそばには「むしろこれでよく付き合えているな。好きじゃない気がする(笑)。好きなところは文章と声だけ。これ、恋人じゃなくても良くない?」と、自身に問いかけるような言葉もあり、思わず噴き出してしまいました。
そのあとには「自分が恋人に望んでいる状態」という理想像も8つほど挙げられていて、「〇〇さんとの関係が終わるとどうなるか」「結局どうするか」も具体的に書かれていました。この思索の跡を見返すと、次のアクションを導き出すために、自分なりに結論を出そうとしていたことが分かります。
「結局どうするか」の選択肢として、「複数の人と付き合う(皆月一回会う)」「執着しない。別に〇〇さんじゃなくていい」「いい人がいたら心を乗り換える」といった項目もあり、取り得る選択肢ではあるなと感じたのでした。
人間関係は鏡だと言いますが、〇〇さんも十分に変わった人でしたし、私自身もメリット・デメリットで判断して恋人をつくるような、さもしい面があったのだと認めざるを得ません。少なくとも、この人と関わっていた期間はそうでした。
まだ続くのだろうか? と次のページも気になってめくると、理想のパートナーに求める条件が20項目も並んでいました。「私を大事にする」「愛情表現をおろそかにしない」「情熱を注ぐ対象がある」「健康に気を配る」「穏やか」「危機管理能力が高い」「稼ぐ力がある」「歯並びがきれい」「ガチムチ系」「身長175センチ以上」など、細かな条件が多岐に渡っていました。
このリストを読み返して驚いたのは、現在のパートナーがその項目の9割近くを満たしているということです。特に最初のほうに挙げた要素は、私が心から求めていたものだと思います。そして、それが現実に大きく反映されていることに、驚きと感謝の気持ちが込み上げてきました。
この経験から改めて実感したのは、「書き出すと現実になる」という説は一定の信頼に値するということです。当時、不安定な心を静めて整理するために書き出していた事柄が、結果的に未来を形づくる手助けをしていたのです。最近、手書きでノートに書き出す習慣を再開したこともあり(これについては後日詳しく書きますが、冒頭の使いかけのノートを使い1日1ページ書いています)、今後もこの「手書きの魔法」を大切にしていきたいです。
Text / 池田園子