「おおらかに生きる」ことを意識すると、心がかろやかになります。完璧を追い求める「〜しなければならない」というマスト思考を手放し、「これくらいでいいよ」と緩やかに考える感覚を持つこと。いくつかの事例を挙げながら、「おおらかさ」がもたらす心地よさについて話します。
昨年までの私は、言わば「マウスピース原理主義者」でした。歯列矯正を終えたあとも就寝時にマウスピースを装着することが推奨され、それをやめると歯並びが元に戻るといわれています。引き戻し現象的な感じですね。
もちろん、歯並びが崩れると困りますが、一晩つけなかったからといって翌朝すぐに戻ることはありません。それでも「基本的に装着すべき」という意識が強く、外泊時には必ず持ち歩いていました。
しかし、今年からは「1日くらい大丈夫」と考えるようになり、1泊の外泊時にはマウスピースを家に置いていくようになりました。水気があるのでバッグにそのまま突っ込むわけにはいかず、小さなポリ袋にケースを入れる手間から解放されたのはうれしい。
整った歯並びをキープしたいマインドが根幹にあるので、たとえ1日つけなくても、それが2日3日……とつけない習慣として定着することはないと分かっているからです。
ほかにも、おおらかに生きる事例はあります。これもお出かけ関連ですが、出張や旅行時には1枚のボトムスを数日・いろいろなシーンで着るように。
旅行や出張では、あえて1枚のボトムスだけで数日過ごすことも多くなりました。たとえば、ストレッチの効いた黒いパンツなら、日常の外出だけでなく、ジムでのトレーニングもそのままこなせます。ラインや質感が好きで何年も穿いていた黒パンツが廃盤になり、代わりにファクトリエの「ミラノリブワイドパンツ」を購入したところ、これがとても使いやすく、汎用性も抜群です。
買ってからポケットがないことに気づき、ガーンとなったのですが、シルエットの美しさと快適な穿き心地が気に入り、1泊2日の外出ならこのパンツ1本で十分だと感じています。2日連続で同じパンツを履いても何も問題なく、「これでいい」と割り切ることで、気持ちも荷物も軽くなります。
朝のスキンケアでも、日によっては洗顔料を使わず、ぬるま湯で顔をさっと洗うだけにしています。「必ず洗顔料を使わなければならない」というルールに縛られず、その日の肌の状態に合わせて対応するようにしています。
「こうしなければならない」という思い込みやルール的なものを手放すと、今あるもので工夫する力や新しいアイデアが自然と湧いてきます。おおらかに生きることは、完璧主義からの脱却だけでなく、心と頭を柔らかくして、創造性を発揮するきっかけにもなります。
そんなシーンを増やしていくことで、より楽に、少ない資源で、豊かに生きられるようになるのではないかと考えています。
Text / 池田園子