某宗教家の講演会へ – 演出や集客から学ぶこと。

大量の砂鉄が磁石に吸い寄せられていく——。「私たちは、家族や友人、知人など、自分を取り巻く人々や環境の影響を大きく受け、このようにさまざまなモノを背負っているのです」。講演者のゆっくりした落ち着きのある声が広い会場に響き渡りました。

2024高橋佳子講演会」は知人からの誘いで訪れたものでした。高橋佳子さんをご存知の方はいますか?

私は講演会開始直前、スマホで検索したところ、高橋さんが宗教法人GLAの主催者だと知りました。信者数は62,000人ほどだそうです。

そんな高橋さんの本は、大型書店へ行くとスピリチュアルや思想・哲学系の書棚に大体置いてあります。買ったことはないものの、スピリチュアルにやや傾倒していた一時期、手に取って流し読みをしたことはありました。

高橋佳子というお名前、書籍をたくさん出している方、程度の情報しかありませんでしたが、開催2日前に案内を受け取ったとき、高橋さんが誰であれ「もう一人の自分」という講演テーマに興味を持ったのでした。同時に、誘ってくれた方の雰囲気が良いので、その人たちがインプットしている要素に触れてみたい、という考えもありました。

当日。会場に一歩足を踏み入れると、独特の空気が漂っていました。参加者たちの熱気がものすごい。物販ブースには人が詰めかけ、エスカレーターに乗るのも大変なほど。

最初の1時間は高橋さんが説く「魂の学」で人生に気づきを得た方、それを実践してどん底に落ちた時期から這い上がって復活を果たした方の事例がドキュメンタリー映像で紹介されました。とくに後者のは対象者の人生を6年追いかけたもので、予算や時間など多大なリソースがかかっていることが予想できました。

そして、40分の休憩(ここまで長いのは初めてかも)を経て、高橋さんの講演がスタート。冒頭、スクリーンに映し出されたのは、頼りない細い鎖に繋がれた象の写真。高橋さんは「これは何を意味しているでしょうか」と問いかけます。

言葉よりも視角情報の方が有利なのは広く知られていますよね。この方法はセミナーや勉強会をするときに使えるなあと改めて思いました。基本的に端的な文章でパワポを作りがちなので……。

同じように、先の砂鉄と磁石の実演は、以前受けていたコーチングの「環境を変えることの重要性」の教えと重なり、あらゆる世界(業界)では例示する内容や説明の仕方を変えたりして、共通することを違う言葉で言っているものだよなあと、面白く見ていました。

今回の講演パンフのメインビジュアルである氷山。その海面下の部分には、見えない大きな可能性があると言われていましたが、見えている部分が意識で、残り9割は無意識ですよというコーチングでの説明のされ方と一致します。近いものがあるのでしょうね。

高橋さんが30分ほど話したあとは、「もう一人の自分」との出会いで人生が一変したという方を壇上に招き、インタビュー形式で人生ストーリーが語られました。それは1時間にも及びました。最後には涙ながらに語る姿に、会場全体が感動で包まれます。

この集まりは新興宗教なのだ。それを踏まえると、会場の独特の熱気や一体感に納得します。コミュニティに所属し、信じる人たちの純粋な情熱がそこにありました。私自身は特定の宗教に興味はありませんが、人の在り方に多大な影響を及ぼすコミュニティの力を目の当たりにしたように思います。

私を誘ったご夫婦も、講演後に私にたくさん質問し、どう感じたかを熱心に聞いてこられました。その後、勧誘される可能性があるなと想像し、用意していた「今は他に勉強したいことがたくさんあるし、興味はないのです(本心)」という断り文句は、使う必要がありませんでした。

講演に限らず、集客が大成功している催しは勉強になります。友人の講演業をプロモーションしていく役割も担っているので、今後もパワーのある講演、興味のあるテーマの講演には「勉強」「うまくいっている部分を真似する」目的で足を運びたいと思っています。

Text / 池田園子

【関連本】『もう1人の自分 「魂の賢者」を呼び覚ます