Netflixで配信中の『あいの里 シーズン2』にハマって視聴中。恋愛市場の外に身を置く者としても、シーズン1から続けて楽しんでいます。
映像は2ヶ月ほど(?)撮影を続けた中のほんの一部に過ぎず、製作者の意図を元に編集され、ストーリーとして成立しています。だから面白い作品として見られるのです。
「リアル」ではなく「つくられた世界」。分かっていても引き込まれ、家事の合間や食事時など、時間があれば視聴を進めていました。
作品のカギを握るのは個性的な登場人物たち。シーズン1との比較にはなりますが、より一層個性的というか、視聴者にツッコミの余地を与えるメンバーが集められている感があります。
たとえば、中学生の頃から外見コンプレックスを抱え続け、事あるごとにそれを持ち出して涙する女性は、顔のえらが目立たないようにと、フェイスラインを覆い隠すボブヘアを20年近く貫いているのだといいます。“中間”というものを持たず、0-100、白-黒で物事を見るクセがあったり、女性との距離の詰め方に独特の価値観を持っていたりする男性は、本命がひとり去るごとに、今度は別の女性に好意を持ち、やや暴走してしまうのでした。
全20話中、公開済みの16話まで視聴を終えたところで、3組のカップルが誕生しています。あいの里を出ていった人たちに共通していたのは「思慮深き積極性」です。
ただ闇雲に押せ押せという感覚で動くのではなく、相手の感じていることや状況を観察し、一定の仮説を立てて行動を起こす――当たり前と感じられるかもしれませんが、そんなバランス感覚を持ち合わせた人ばかりでもないことに気づきます。
一般の世の中だってそうです。だから一方が暴走するなど、恋愛に関する悲しい事件が起きることもあるわけです。
意中の相手に好意を持ってもらい、恋愛のスタートラインに立つには、観察力や想像力、思考力など、多面的な力が欠かせないのだと改めて実感します。同時に、自分を大事にする力や自信なども必要。
本作の魅力はほかにもいろいろあります。一定の制約ある空間で生まれる感情の機微、個々人の価値観の違いが生む軋轢と調和、長い人生経験を経て身についた大人ならではの譲れなさ、頑さ、それによる波紋などが描き出されているのです。
普段の生活では出会わないような価値観や個性を持つ人々との出会いは、一視聴者に対して新たな気づきをもたらしてくれます。「こんな人もいるんだな、こう考える人もいるんだな、気をつけよう」。仕事や社会生活において、多様な価値観が存在していると心得よと戒めてくれているようにも感じています。
最終話に向けて、どのような展開が待っているのか。予想を立てながら楽しむ醍醐味も、本作ならではかもしれません。
未視聴の方には一度ご覧いただきたい作品です。そして、すでに観られた方との意見交換もしてみたい。恋愛を超えた人間理解と向き合える一作です。
Text / 池田園子
【関連本】『もう一度、恋させるために』