本ほど気軽に手に取れて、人生を良い方向へ向かわせてくれるものって、ほかにあるのかなあと思うことがあります。ハードカバーのものなら1冊1,500〜2,000円程度、かける時間は1〜数時間で、著者が長年積み上げてきた知見にふれることができるのです。
コスパという言葉は好きではありませんが、分かりやすく言うと「コスパの高い自己投資」。でも、その本当の価値を引き出すには、単に読んで「ふんふん、なるほど」と納得するだけでは足りません。書かれている内容や自分の心が動いた部分を行動に落とし込むことが必要です。心を動かし→身体を動かす、といった流れでしょうか。
仮に1,800円で買った本があるとします。その本の中で「これはやってみよう」と思ったことをひとつでも実行に移せたなら、私は「1,800円分は回収した」と考えます。むしろ、その行動が成果につながったり、生活や仕事を改善するきっかけになったりすれば、1,800円以上の大きなリターンを得ることができるでしょう。
一方で、読んで「良いことが書いてあったな」と思うだけで、行動に移さないのはもったいないこと。もちろん、すべての本が行動変容に結びつくものではなく、中には「買った意味がなかったな」と思う本もあります。相性もあるので、それはそれで勉強代です。ほかの人には合うかもしれないので、売ったりあげたりすればいい。
先日『とにかく仕組み化』を読みました。著者は識学の創業者 安藤広大さんで、2023年夏に出版されてベストセラーに。組織や個人における仕組み化がテーマです。大阪―京都の往復2時間で読み終えた、ページ数やテーマのわりに読みやすく、咀嚼しやすい1冊でした。
本書を読んで、自社の現状を省みるきっかけを得ました。会社として設けているルールの中にゆるく、定性的かつグレーゾーンになっている部分があり、数値を付加して定量化・明確化すべきだと考えました。白か黒かで分けづらい要素ではありますが、ルールや仕組みの上では数値を元に厳格化すべきだと判断したのです。
年末年始の休み中、曖昧さがあるルール・仕組み部分を洗い出し、1月中に数値をベースにしたルールとして変更することを目標にしました。それを公私すべてのプロジェクトを管理するノートの「Future Log(未来にやることリスト)」1月部分に追加。月末に次月の仕事を細かいタスクに分解し、実行に向けて計画を立てていきます。このように、1冊の本から得た学びが行動につながり、その行動が会社全体の改善に結びつく可能性があるのです。この時点で、本書は購入価格1,760円を遥かに超える価値を及ぼしてくれました。
最近も、多くの本を購入していますが、そのどれもから少なくともひとつ以上は行動につながる学びをいただいています。読んで心が動かされた本を生かすには、ある種「元を取る」マインドが不可欠だと思います。得た知識や生まれた気づき、考えを頭の中に保存したままにするのではなく、現実の行動や変化に結びつけること。
本を読んで生まれた自分なりの抽象的な考えを具体的な行動に変えることで、本の価値は最大化するのです。
良本と出会って、次に取る行動を書き出しているとき、幸せな気持ちになります。これからもそういった本に感謝しながら、自分の生活や仕事を前進させていきます。
Text / 池田園子
【関連本】『とにかく仕組み化』
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