「期限を切る」は互いに対する配慮。

社会にいると「時間」に対する感覚の違いを実感することがあります。相手方に「ご確認後、ご返信ください」と要望し、こちらの認識では今日明日には返ってくる内容であっても、実際にはそうならないこともあります。相手が忙しかったり、忘れていたり、意図的に返信を避けていたり。事情は分かりません。それでも「この人は問題なく返してくれる」と、どこかで期待する自分がいる。けれども、そんな期待が通用しないことも多々あるわけです。

直近で数件そんなやりとりがあったことから、すべてにおいて「期限を切る」ことを仕組み化し始めました。これまでの経験上、期限を設けたところで守らない人や忘れる人がいるのも分かってはいますが、期限を示すことはそれだけで一定の抑止効果を生み出します。「〇月〇日までに返信がない場合、異論はないものとみなします」などと書いておくなど。

それでも、単に期限を設けるだけでは関係性に支障をきたす場合もあります。期限が過ぎたときに「〇月〇日までのご返信をお願いしていましたが、いかがでしょうか?」とリマインドすることで、相手に再度考える時間を与えることができます。そうすることで配慮も示しつつ、必要なやりとりを進めることができるのです。

他人との違いにふれて心がざわつくとき、「自分の基準が世の中の基準とは限らない」という当たり前の意識を思い出します。当然のことなのに、困ることがない恵まれた日常を送っていると、それを忘れている自分がいるのです。自分にとって当たり前のことも、相手にとっては必ずしも当たり前ではありません。それを受け入れた上で、何をどう進めるかを考える必要があるというのに。自分の常識が他人にとっての非常識であるかもしれない。そんな考えをベースに持ちながらも、自分の行動を無駄にしないための仕組みを整える。そのひとつが期限を切るという行為です。

ただ、期限を守らない相手を責める気持ちは持たないようにしています。器の大きい人間ではないので、若干イラッとすることもありますが、人にはそれぞれの事情があり、時には忘れることもあります。私も抜け漏れはあるでしょう。だからこそ、期限を示しつつ、相手を思いやる心も忘れずに持とうと努めてはいます。

私たちは100%パーフェクトに自分のペースで生きることはできません。それでも自分の時間を大切にしつつ、相手を尊重する仕組みをつくることで、より良い関係を築けるような気がします。期限を切ることはビジネスライクに感じられるかもしれませんが、互いに対する配慮のつもりです。その仕組みの中で、双方がスムーズに動けるようになるなら、それは誰にとっても心地よい選択だと思います。

Text / 池田園子

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