「ただひたすら街歩き」こそ、引っ越し前の良質な下見。

1月3日の午前、私たちはJR京都駅を起点に、北へと歩き出しました。京都駅がある下京区から中京区、そして上京区へと、街の変化を感じながら北上します。

今年、大阪→京都に拠点を移す計画があり、絞り込んだエリアのリサーチ・下見を兼ねた散策です。

京都は片道1時間で行けることもあって度々訪れる場所ですが、飲食店や特定のスポットをピンポイントで巡ることが多く、特定の場所を目的にすることなく、ひたすら広範囲に歩き回ることはありませんでした。今回は「歩いて街そのものを体感すること」を目的としました。

不動産を見る際などは、不動産会社の車で案内されることが多いですが、今回はふたりだけで自由に歩き回ります。車や自転車移動ではキャッチできない小さな発見や街の表情が、ゆっくり歩くスピードだからこそ見えてきます。

ある通りでは「ここなら活動しやすそう」と感じたかと思えば、別の通りでは「少し寂しい雰囲気だ」と感じる瞬間も。歩きながら街を肌で感じることで、不動産情報や写真ではわからない空気感を味わうことができます。

京都市には11の行政区があり、先の3つの区は京都市内の中でも中心部にあたり、3つの区をあわせても隣接する山科区に十分収まって余るほど、面積も大きくありません。ただ、歩いてみると思いのほか広かったというか、かなりの距離がありました)

ランチ休憩後に歩いていると、おしゃれな喫茶店を見つけました。「笑顔喫茶」という、年末にオープンしたばかりのお店。外に立てかけられたメニュー看板を見ていた私たちに気づいた店主さんが笑顔で出迎えてくれ、少し雑談することに。私たちに興味を持っていろいろと尋ねてくださるなかで、物件探しのエピソードやお店を始めた経緯なども話してくださり、人当たりの良さと穏やかな雰囲気に、こちらの心も温かくなりました。

買って帰ったキャロットケーキは美味しかった。こうした偶然の出会いも歩くからこそ得られるものです。

その日、2万歩以上を歩いていました。15kmほどの距離だったようです。終盤、太ももの裏に若干の筋肉痛があったのは、普段の2〜3倍の歩数を歩いたからでしょう。明らかに歩きすぎですが、その流れで京都市内のエニタイムフィットネスに寄って筋トレをして帰る頃には、脚はなんともなくなっていました。

この日の経験から、歩いたからこそ得られる感覚があるなと気づけました。場所の「気」の通りを肌で感じられるのは、五感を働かせることができる、歩くという行為ならでは。

歩くことで見えてくるのは、地図やガイドブックには載らない街の個性です。その場所に住むことを考えるなら、ただ歩くことが良質な下見になると実感しました。歩いて街の空気に触れ、その土地の暮らしやすさを想像すること。そんなわけで、新年初の京都散歩は、下見を超えた豊かな時間になりました。

住む前に歩くことで、その街がどんな場所なのかを肌で感じ、未来の暮らしを描いていく。住んだあと歩くと、街をもっと知ることができて、ときにセレンディピティが発生する。そんな考えのもと、ひとりでも、ふたりでもてくてく歩きを楽しむ。京都でのそんな新生活を想像すると、楽しみがふくらんでいくのでした。

Text / 池田園子

【関連本】『京都こだわり街歩き

毎日をもっと楽しむヒントをお届けします。
「SAVOR LIFE」では、生活をより豊かにするためのアイデアや情報を発信しています。会員様限定のお知らせや限定コンテンツをニュースレターでお届けします。ご登録ください!