目的が分からないと始まらない

先日訪れたカフェで、「もう来ることはないなあ」という感想を抱きました。

メニュー写真と実物との残念なギャップが感じられた、客は私ともう1組で混んでいないのに食後のドリンク提供の間が悪い、というのもその理由ですが、私が最も気になったのは「最初のやりとり」でした。そこに焦点を当てて書いてみます。

今回のようにサービスにがっかりしたり、逆に感動したりと、気持ちの振れ幅が大きい顧客体験は貴重です。

顧客になんらかのサービスを提供するあらゆる人にとって、「自分の仕事において、顧客満足度の高いパフォーマンスとは何か」を自分ごととして考えるきっかけになります。

お店で客として感じた課題を振り返り、それを逆に考えることで、魅力的なサービスの条件を言語化できて面白いです。そんな視点で見ると、ここで記事のネタになりましたし、元は取れたと思っています。

さて、お店でのはじめのやりとりです。最初が肝心とはその通りで。13時に入店して着席すると、外の看板に掲示されていたランチメニューとは異なるメニューリストが渡されました。

あれ? と戸惑います。(11時か11時半オープンで、まだ13時でランチ利用する人もいる時間帯のはず。もうランチタイムは終わったの? それとも外看板が古いの? いや、そんなはずはない)

ランチを期待していたのに、最初に出されたのはカフェメニューだったんです。スタッフさんは13時というランチのピークを過ぎた時間帯だから、この人はカフェ利用で来たのかもしれないと想像して、ある種の配慮をしたつもりで渡してくれたのかもしれません。

しかし、結局スタッフさんを呼んで「外看板のメニューはまだありますか?」と尋ねて、ランチメニューを改めて持ってきてもらいました。少々お待ちくださいと言われ、数分待機。この「無意味な待ち時間」により、期待感が削がれたのは言うまでもありません。

私なりに考える、客・スタッフ双方にとってスムーズなやりとりができる対応は、あらかじめランチとカフェ2種類のメニューを手渡してもらうこと。

まだ会話もしていない客がどちらを希望しているかなんて分からないはず。開口一番「お茶したいんですけど、席空いてます?」なんて問いを受ければ、ああお茶が目的なのねと分かり、カフェメニューだけで事足ります。一方で、私は「ヒント」を何ひとつ渡していないわけで。

自分の解釈で想像して、中途半端なアウトプット(今回は2種類あるメニューのうち1種類だけ渡すということ)を提示するのは違うだろうと感じるのです。

一般的な仕事においても、顧客がどうしたいか、どうなりたいかという目的を知った上で動きを進めていくのは当たり前。私の仕事でもそうです。

クライアントワークなら、顧客の理想とするゴールを聞いた上で、それを実現していくための提案をします。顧客の目的が分かって初めて、顧客に示すアウトプットや自分がその後とっていく行動を決めることができます。

自分ひとりで進めるプロジェクトでも、サービスなりモノなりを買ってくれる未来の顧客のゴールをリサーチした上で、動きを進めていくはず。

相手の目的を捉えないままに動くことの不毛さ、それによって生まれる心と物理的な距離感、「リピートはない」という明確な意思……。いいことなしです。

皆さんは最近訪れた店、あるいはなんらかのサービスを受けて、良くも悪くも心が揺さぶられたことはありますか? あって気づいたこと、考えたことがあれば教えてください。

Text / 池田園子

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