言葉から修正して、思考や行動を変えていく

先日「不要な表現を捨て、必要な表現を添える練習を」を公開したのに続き、今日も『降伏論「できない自分」を受け入れる』(高森勇旗)から影響を受けた話を。

本書には「確かに!」と気づきをもらえる事例が多数書かれています。日本語だと、挨拶程度の何気ないやりとりの中で「◯◯してくれてありがとう」とは言わないなあ、というのもそのひとつ。

たとえば、相手が「元気にしてる?」と聞いてくれたとき。皆さんはどう答えますか? そしてその後会話はどう続いていきますか?

「元気だよ」「あなたは?」といった展開になることが多いのでは。そこに「ありがとう」の要素はない。対して、英語圏では“How are you?”に対して、“I’m fine. Thank you for asking.” と、「聞いてくれてありがとう」と返すことが一般的だとか。

コロナ下初期の頃、オンライン英会話レッスンを受けて、世界各国の先生たちと話していたときのことを思い出しました。ほんとだ! さらっと、ごく自然と感謝の言葉を挟んでくれていました。当時は鈍くて「おお、なんてことない挨拶に対し、お礼を言ってくれている!」とハッとしなかったのですが。

つい昨日、友人と月1のオンライン振り返り会をする機会があり、早速実践しました。彼女が「そのちゃん、元気だった?」と聞いてくれたので、まず「聞いてくれてありがとう」と言って、元気だよと伝えました。

最初は珍しいタイミングでのお礼に驚かれるかもしれませんが、その後の会話はより和やかに温かい雰囲気になると思います。ありがとうの具体化・言語化が秘めたパワー、ものすごい。使えるだけ、使っていきます。

何気ない言葉に対する意識が研ぎ澄まされてくると、自分の言葉使いにも「これは変えよう」という気づきが生まれます。

例えば、先日数メートル離れたところにいるパートナーをハグしようと考えたとき、私は「抱っこ抱っこ(※)してあげるからおいで」と言っていました。相手は喜んでくれるものの、「〜してあげる」という言い回しには、上からなニュアンスが含まれていると感じました。

※いつしか、どちらからか分かりませんが、私たちはハグのことを「抱っこ抱っこする」といったラブリーな表現で言い表すようになっていました。なんだかかわいいし、ただふわっと抱き締めるだけなので、性的な要素を削ぎ落とした言い方が適切で、気に入ってもいます。

そこで、「あ、今の言い方、エラそうだった。言い直すね。抱っこ抱っこしよう」と言葉を変えました。提案型の表現。使う言葉に必要のない意味やニュアンスを付加せず、極力削ぎ落とすことを目指します。

言葉を変えるだけで、思考が変わります。そして、思考が変わることで、行動が変わります。言葉は自分自身を形づくるものです。心はいとも簡単に使う言葉の影響を受けるというのは、多くの人が実感していることだと思います。

前回の記事と合わせた総括をするならば、「〜しようと思います」ではなく「〜します」。「ありがとう」だけで終わらせず「◯◯してくれてありがとう」と、相手の貢献を具体化する。「〜してあげる」ではなく「〜しよう」とフラットに言う。

私と関わりのある方はご存知のように、私は不完全な人間です。欠けているところがたくさん。だからこそ、言葉から修正して、思考や行動を変えていく。言葉を変えることは、自分をアップデートしていくことにつながっているから。

Text / 池田園子

【関連本】『降伏論「できない自分」を受け入れる

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