「価値観の言語化・再定義」のチャンスは自分でつくる

「親密な関係になる前に、互いの価値観をシェアし合う機会って、これまでどれくらいあっただろう?」

そんな考えが浮かんだのは、友人の麻子さんとのコラボ配信を収録中、「浮気の境界線ってどこ?」といったテーマで話したときのこと。盛り上がって「浮気・不倫の境界線を言語化するワークシート」を作成し、配信URLに付録として添えたほどです。

浮気や不倫に限らず、金銭感覚や健康意識、仕事観、対人関係における距離感——人にはそれぞれ異なる考え方があるものです。それを深い関わりになる前に言語化し、互いに知ろうとする機会を持つのは大きな意味があります。

たとえば、のちのち「私はこう考えていたのに、あなたはそんな考え方だったの? 信じられない」などと驚いて、違和感を覚えた経験はないでしょうか。後になって「どうしても受け入れられない」「あり得ない」というほど大きなすれ違いや悲劇が起きる前に、双方の価値観を共有して考え方の違いを知ることは、お互いのためなのだと思います。

ワークシートは「浮気の言語化や再定義を行うためのツール」として、真面目につくりました。世間一般の価値観や辞書にある説明ではなく、「自分にとって何か?」を考えて具体化することが目的です。ふざける意識はありません。「気(気持ち)が浮く」と書いて浮気です。私も書き出して、自分なりの物差しを言語化したところ、予想の範囲内でしたが、社会に広く流通している価値観とは乖離があるなあと、再認識することができました。

このワークシートをつくる過程で感じたのは、「自分の価値観を言語化する機会は、意識しない限り、なかなか得られない」ということ。頭の中ではなんとなく考えていても、いざ言葉にしようとすると、他人に伝わるような説明ができなかったり、曖昧なままにしたりすることも。だからこそ、普段から「なぜ私はこう考えるのか?」「この考え方はどんな経験から生まれたのか?」と、自分に問いかける習慣を持ちたいです。

私自身、何かについて深く考えたいときは、言葉にして整理するようにしてきました。拙い言葉でもいいんです。頭と心の中を単語レベルでも書き出していくうちに、言葉同士がつながったり、思いもよらぬ新たな言葉が出てきたり。そのうちに、世間一般の物差しとは異なる、オリジナルな思考が浮かび上がります。

そうなれば、相手と価値観を共有する際にも、感覚ではなく言葉で伝えやすくなるはず。これは恋愛や結婚に限らず、人間関係全般において誰に対してもできるとラクになります。溜め込まずに済みますから。自分もすべての人にそのスキルを適用したいものの、何らかの事情で多少なりとも遠慮してしまう相手には、まだうまくできないなと感じます。練習あるのみ。

「違いを知り、味わう」。それは曖昧さを残したまま、許容することではありません。相手の考えを知り、それが自分にとって受け入れられるかどうかを考えること。そして、どうしても歩み寄れない部分があるなら、無理に関係を続けるのではなく「関係性の在り方を問い直す」という選択肢に手を伸ばしてみること。

そのほうが、自分自身を最も大事にできると同時に、相手のことも大事にできているわけで、双方にとってよい未来につながるのではないかと考えています。

Text / 池田園子

【関連本】『自分言語化ノート

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