先日、友人へのお祝いのひとつとして本を贈りました。選んだのは、1998年に刊行されたのち、約20年で1,600万部超という世界的ベストセラーとなった『モリー先生との火曜日』の愛蔵版です。外箱付きの高級感のある仕様で、新たに手に取る人にとっても、すでに読んだことのある人にとっても、特別な1冊になりそうだと感じました。
この本には、ALS筋萎縮性側索硬化症)を患いながらも、毎週火曜日にかつての教え子と会い、「人生の意味」を“特別授業”として伝え続けた元大学教授・モリー先生の実話が綴られています。教え子であるスポーツコラムニストで作家のミッチ・アルボムがモリー先生とのやりとりを通して、自らの人生を見つめ直していくノンフィクション作品です。
全編を通して、人生において最も大事なのは愛であり、どう愛するか、どう愛を受け取るかが重要であるといったメッセージが書かれています。愛が人生の根っこにある。その上で、どう生きて、どう死んでいくか。死を考えれば、どう生きるかを見つめられる。死生観についても触れられています。
日々生きていると、目の前のことばかりにフォーカスするあまり、愛や生死といった大きなテーマと真剣に向き合う時間をあまりとっていない、と気づくのは私だけでしょうか。もちろん(?)人生で仕事が一番大事だ、なんて思ってはいません。生きる目的は仕事でも、自己実現でもないからです。
まずは、今世における私の魂が、笑顔で楽しく生きることが最優先。自分という存在を愛して満たさなければ、余裕なんて持てなくて、半径2メートルの大事な人たちに愛を注ぐリソース、自らも愛を受け取り感謝するリソースは生まれません。
人生には、迷うこともあれば、つらいこともあります。時には挫折することだってあるでしょう。しんどいことのほうが多い、と認識しています。もちろん幸せなことも多いですが、心はネガティブな感覚のほうを敏感に感じやすいものです。人間という生物の仕組み上、仕方ないこと。そんなときにこの本を開けば、ヒントが見つかるかもしれません。そんな思いを込めて本書を選んだのでした。
知的でスマート、博学な友人はかなりの読書家ですが、この本はまだ読んだことがなかったそうです。「自分では手に取らなかった本と出会えてうれしい」と喜んでくれました。その言葉を聞いて、本を贈ることの意義を改めて感じました。
日本では毎日約200冊もの新刊が刊行されています。年間にすると70,000冊以上の新刊が出ている計算。どんなに本を読む人であっても、当然のことながらめぐり合わない本は山ほどあります。むしろ、ほとんど出会わない。
そう考えると、自分というフィルターを通して「この人にはこの本がいいのではないか」と考え、想像しながら本を選び、贈るという行為は、セレンディピティ的な役割を果たすように思います。これも一種の「編集」です。自分の知見や読書歴、相手に関する情報、今の状況、好み……それらを集め、混ぜたり、くっつけたり、離したりしながら、最後は直感に従って決めます。
日々の中で、自分では選ばなかった1冊がふと手元に届く。何気なくページをめくると、そこに光となるような言葉を見つけられるかもしれない。そんな体験をしてもらえたら何より、と願いながらのギフト選びは最高に楽しいものです。
Text / 池田園子
【関連本】『モリー先生との火曜日』
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