夜の静寂、手仕事で広がる私の世界

家族が眠りについた静けさのなか、私だけの時間が始まります。
料理や手芸などの手仕事をする、幸せなひととき。

艶やかにゆであがった豆
均一な焦げ目が美しいチーズケーキ
滑らかな編み目のニット

一つひとつ丁寧に作り上げていく過程は、誰にも遠慮せずに没頭できる貴重な時間です。

子どもの頃から、料理や手芸は私にとって日常であり、特別な存在でもありました。
卵焼きを作れるようになったのが嬉しくて、チーズやきんぴらなど、何の具材が合うのか実験していた小学生の頃。
中学生になってからは、母が持っていた小林カツ代さんのレシピ本を片手に、料理の世界を広げていきました。
高校時代は手芸屋さんに足しげく通い、服を縫うように。アクセサリーを作るようになったのも、この頃です。
編み物を始めたのは、社会人になってから。
上の子が赤ちゃんの頃は、スタイやフェルト製のおもちゃ、そしてダンボールで家やキッチンまで作っていました。

料理も手芸も、なんてことない素材が人の手によっていくらでも変化するため全く飽きません。
レシピや説明書にはない、自分だけのエッセンスを加えられることも魅力です。

少しの気の緩みが悲惨な結果を招くことも、偶然が重なって予想外のものが生まれることも、全てが私の糧となります。

とはいえ、疲れて何もしたくない日もやってきます。そんなときにおすすめなのは、布団の中でレシピや手芸の本を眺め想像の世界を楽しむこと。
お気に入りは『バスクの修道女 日々の献立』(丸山久美)。レシピに加え、料理の背景や修道女の知恵が紹介されています。
レシピ本としては写真が少なく、スペイン・バスク地方の修道院が舞台になっていることもあり、味の想像ができない料理も数知れず。
だからこそ、修道院の生活を想像し、まだ見ぬ料理に想いを馳せ、いつか現地に行ってこの目で見てみたいと夢が膨らみます。

自分が作った料理を美味しく食べてくれる家族。
飾り付きヘアゴムや、アクリルたわしを喜んで使ってくれる友人たち。
自分のために使っている時間でありながら、誰かに喜びを与えられるところも、ますます手仕事の魅力と言えます。

手仕事をしている間は、日々のストレスから解放され、無心でいられます。
静かな空間で、自分の手と心と向き合うこと。
何かを生み出す喜び。
完成したときの達成感、そして愛着は、何ものにも代えられません。

手仕事の可能性は、無限大。
これからも、さまざまな手仕事に挑戦し、自分だけの世界を広げていきたいです。

Text / Asako Yano

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【関連本】『インド刺繍リボンのこものたち

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