今日は他人とのやりとりに要する時間と精神のエネルギー、言い換えるとコミュニケーションコストの話。
とりわけ仕事においては、業務の進め方ややりとりの仕方が人によって大きく異なるため、スムーズに進む場合もあれば、「1回で済むはずが……なぜ?」と予想外に何往復もするなど、手間がかかることもあります。
例えば、何か質問をした際に、相手方は答えているつもりでも、こちらとしては意図が伝わっておらず「ちょっと何言っているかわからない」と感じることがあります。「AとBの選択肢があり、どちらにしますか?」と聞いたのに「CとDです」と返ってきて、戸惑うような場面。こうしたすれ違いを解きほぐすには、もう一歩踏み込んだ質問をして、相手の言葉を明確化することが必要に。このプロセスが増えるほど、やりとりにかかる負担は大きくなります。
一方で、答えや返信を端的かつ的確に返してくれる人もいます。そうした相手とのやりとりはテンポよく進んで、ストレスフリーに感じます。こういう人ばかりだったらいいなあ、とあり得ないことを願うのでした。この差を考えると、コミュニケーションの取りやすさには個人差があり、それが「やりやすい」と感じるか、「面倒だ」と感じるかの分かれ目になっているのは確か。
また、礼儀的なやりとりに対するスタンスも人それぞれです。「ご確認ありがとうございます」と一言添える人もいれば、要件だけを伝えることを重視する人もいます。私の場合、お礼は感謝の気持ちを誰にでも分かるよう言語化したものです。それを不要と感じる人にとっては、「早く本題に入れ。時間の無駄だ」と捉えられることもあるでしょう。
いろいろと考えていると「コミュニケーションコストがかかる」という発想そのものが、間違っているのかもしれないと思えてきます。人によって価値観や作法が異なる以上、やりとりにかかる手間や負担をコストとして捉えること自体が、正しいとは言えない可能性も。そして、自分もまた、誰かにとって「やりづらい相手」になっているでしょうから。
すべてのやりとりが気持ちよくスムーズに進めば最高。でも、現実そうはいきません。不可能です。諦めています。背景も思想もひとつとして同一のものはなく、一人ひとり違う人間なのだから。であれば、他者のコミュニケーションスタイルを受け入れ、必要以上にストレスを感じることなく、“いい加減”に対応していくことがスマートなのかなと思いました。
Text / 池田園子
【関連本】『コミュニケーションの問題地図』
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