『大谷翔平への17の質問』を読みました。普段、野球を見ることはないのですが、大谷翔平選手の類まれなる活躍についてはニュースなどで目にしています。「唯一無二のスーパースターは何を答えたのか?」といった関心から、書店でこの本を手に取りました。
もうひとつ、この本を手に取った理由があります。それは、本書の著者がスポーツニッポン新聞社の柳原直之さんという記者で「大谷番」を約12年にわたり務めてきたこと、そして副題に「取材現場で記者はどんな葛藤と戦いながら質問をするのか」と記されていたこと。
私自身も、人に取材をして記事を書くということをしてきた経験があり、「問いの立て方や重ね方、答えの引き出し方を知りたい」と思い、購入しました。いつまで経っても取材とは簡単なことではないと感じるから。
本書に掲載されているのは、厳選された17の質問とそこから成るストーリー。その質問を立てた背景、それに対して返ってきた答え、やりとり当時の大谷選手の様子、柳原さんが感じたことなどが丁寧に描かれています。取材当時の周辺状況やエピソードも添えられ、読み応えのある内容となっています。
二刀流という前人未踏の挑戦を続ける大谷選手は、常に時間に追われています。取材時間も非常に限られ、一瞬にかける準備の重要性が伝わってきます。記者として入念な準備を重ねた上で臨んでも、現場では他の記者からの問いとの兼ね合いや選手の心身のコンディション、状況などにより、思ったような答えが得られないこともあるようです。「もう少し詳しく語ってくれるだろう」といった期待が叶わなかったとき、柳原さんのようなベテラン記者でも焦るそう。
「物事は準備が9割」とはよく言われることです。誰もがその重要性を知っているでしょうし、「この◯◯を成功させたい」と願う人は、全員が入念に準備をするはずです。柳原さんもそのひとりでしょう。しかし、どれだけ準備をしても、現場では思いも寄らぬ出来事や化学反応が起こり得るのです。人間というちっぽけな存在にはどうしようもない、宇宙の采配的なことが。
それでも私たちは、できる限りの準備をした上で、その場の流れにうまく乗って臨むしかありません。準備は怠らず、それでいて「思い通りにならないこともある」とあらかじめ心に留めておく。そうした真面目さと柔軟さを併せ持つことが、物事に誠実に向き合う姿勢なのだと、本書を通じて改めて感じたのでした。
【音声でも】
Text / 池田園子
【関連本】『大谷翔平への17の質問』
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