『SLOW 仕事の減らし方』を読みました。本書の副題は「『本当に大切なこと』に頭を使うための3つのヒント」。「削減(すべきことを減らす)」「余裕(心地よい早さで働く)」「洗練(品質にこだわる)」の3つです。
昨今のワーク・ライフスタイルのトレンドは「働きすぎない」「選択と集中」「人間らしい生活を取り戻す」だと感じています。AIの普及により、私たちが頭と心、身体を使っての思考・創造という営みに、より時間を使えるようになったことも背景にあると思います。
これまでは「仕事をたくさんしている=すごい」という見方が大方だったのではないでしょうか。最近では「(選択と集中をした結果)仕事を減らして余裕を持ち、人間らしく生きる」在り方が自然体でいいとされるようになった印象を受けます。
本書で特に刺さったのは、「新しいことを始めるには、まず何かをやめたり減らしたりしてスペースを空ける必要がある」という当たり前ながら大切な考え方です。古今東西、いろいろなところで、多くの人が言ってきたことですが、今の私には自分ごととして飛び込んできた話でした。「知っている」「分かっている」と「実践する」との間には大きな差があります。
新しいプロジェクトを立ち上げたとき、皆さんはどうしていますか? 「既存の仕事の合間に」しようとしませんか? 私もそうです。でも、本気で何か新たなモノをつくりたい、成し遂げたいと思うのであれば、それには集中できるまとまった時間が必要であり、余白がなければ生まれないと著者はいいます。
ただ、既存の仕事をすべていきなり手放すのはなかなか困難なこと。だからこそ、長期スパンで、少しずつ進めるという方法もあります。ここで登場するのが、タイトルの「SLOW」です。ここで使われるSLOWは「ゆっくり、のんびり」だけではなく、「適切な時間をかけること」を意味しています。
急いで雑に仕上げるのではなく、その事柄を仕上げるのに相応しい時間(期間)を確保し、自分の心身に無理のないペースで取り組むこと。「余裕」の中からこそ、創造的なアイデアや新しい価値が生まれるというのです。
「5年計画を立てる」という考え方も、「本書のお土産」として得たものです。短期間で成果を出すことが求められやすい社会の中で、あえて長期的な時間軸を前提とし、腰を据えて取り組む姿勢を取り入れることにしました。
急がなければいけない明確な理由がなければ、急がなくていいのです。だから、私は焦らないことにしました。
「(適切な)時間をかけることは悪いことではない。むしろ、アウトプットの品質を上げ、それに触れる人のためにも、自分のためにもなる」ことに腹落ちしたからです。
その過程で、すべきことを段階的に減らしていき、やりたいことの割合を高めていく。「長期的な視野を持って、細部にまで意識を張り巡らせながら、良いモノを生み出していくスタイル」でありたいです。
Text / 池田園子
【関連本】『SLOW 仕事の減らし方』
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