僕たちは過去の経験にとらわれて現在を生き、その結果、未来を描こうとしている。「突然どうしたDr.Taro」と思った方にもなんとか今日のコラムを心の奥底まで届けたいと思っているDr.Taroです。
30代のときに家庭が壊れてから仏教や哲学書を読むようになって、特にアドラー心理学に興味を持ってよくアドラー関連の本を読んでいた。
アドラー心理学の考え方に「〇〇だからxxできない、は嘘」というのがある。
例えば、ある男性が女性とこれまで付き合った経験が少ないから、結婚生活がうまくいかず離婚したとしよう。
アドラー的にはどう考えるかというと「交際経験の少ない人全員、結婚生活がうまくいかないのか?」という問いを立てて「いや、そうではない」となる。結局「〇〇だからxxできない」というのは、本人が「xxできない」と決めているだけで、「〇〇だから」という原因めいたものを後付けしているに過ぎないという考え方をする。
こういう考え方(アドラー心理学)を実践するのはとても難しいと感じていたが、それもそのはず。「世界三大心理学のうち、最も単純で最も実践が難しい心理学」の異名をとるのがアドラー心理学なのだ。
あるビジネス系YouTube動画を観ていたときだった。
山宮健太朗という企業コーチングを生業にしているYouTube動画に出会った。アドラー心理学にとても近い考え方で、一言で言えば「どうすればGOALを達成できるか」について分解して考えるような動画だった。
例を挙げればきりがないが、彼が教えてくれた言葉を少し挙げてみたい。
・モチベーションは上がったり下がったりしない。生じるものだ。
・GOALとは現状の外側に置くもので、現状の延長線上にあるものはGOALとは呼ばない
・過去、現在、未来の順に思考するのではない。未来から現在に時間を流す。単に未来からの逆算を考えたとき、その未来とは現状の延長線上にはない。
どこを抜き出しても、強烈なパワーワードに仕上がっている。過去、自分が多く挫折を味わってきた部下のマネジメント。ティーチングはできるがコーチングはできなかった。結局できなかったことが自分を成長させる。コーチングを体得した自分の姿を想像すると明らかに輝いて見えた未来の自分。山宮健太朗という人のコーチング手法を手にしたい欲求が弾けた瞬間だった。
コーチングの本を買って読んでみた。んー。なんだかワクワクしない。
『「コーチング脳」の作り方』『行動経済学が最強の学問である』『図解コーチングマネジメント』などを読んでちょっとかじってはみたものの、血となり肉となった感がまるでないのだ。これなら実践した方が早いなと体験セッションを申し込んだ。
社名は伏せるがこの体験セッション、なんだかしっくりこない。
僕のコーチは年収いくらが何倍になった、ということを売りにする人だったのだが僕にとっては少なくとも憧れられない。そして、無料体験を経て契約したら60万円でコーチングを継続できると言われて、そんな大金をこの人に払うのはなんだかなーと思ってやめてしまった。山宮健太朗に60万円で応じてもらえるならきっと払っていたし、きっと僕が狂喜乱舞したのは山宮さんのコーチングに対する熱と職人性だったのだと今は思う。
時を経て2025年3月。自己理解を無料体験し、GOAL設定までをコーチングしてくれるコーチと出会った。彼女はパートナーが役員を務める会社の社員で、旧GOAL-B(山宮さんがCOOをしてる会社)のコーチングプログラムの卒業生だ。GOALまで5回のセッションを有償で提供している(金額については彼女に問い合わせを)。
この無料体験の自己理解、というセッション。実は自分が最も理解に苦しんでいた部分だった。例えば自分が「ドライヤーでモノを乾かす職人」だと仮定しよう。ドライヤーでモノを乾かすのであるからして、ホテルの大浴場やプールや温泉施設で働くのが一番自分の機能を発揮できる、というのは簡単に理解できる。ドライヤーの機能を理解していれば当たり前だが、現代人は言うなればドライヤーを片手に「弁護士っていいな」「土木建設業ってかっこいい」「IT系に行ってみたい」などと考える。手に持っている武器はドライヤーなのにそんなことを考えてしまう。つまりは自己理解が追い付いていないので職業の選択を名詞で行ってしまう。しかし、大切なのは名詞ではなく動詞。ドライヤーを扱うのだから動詞で考えると「ものを乾かす」ことをメインにしている職業を選ぶべき。そうした方が仕事に無駄なストレスを抱えることなく、天職かそれに近い形で仕事のスキルを上げていけるのだ。
理屈は分かっていても自分に当てはめると分からない。
というのも自分は医師という職業で、研修医時代にまず始めたのは徹底してよくできる先輩医師のモノマネから始めたからだ。強烈な精神力で来る日も来る日も先輩の行動をマネしまくる。しんどい、苦しい、面倒と思ってもただひたすらシャドーイングを行い、コピーしていく。たたき上げるといえば聞こえはいいが、その行為に「自己機能」を投影させる隙間は全くなかった。医師として一人前になった今、振り返ってどの行為が自分に向いていて、職業を動詞で考えるなんて到底できないと思っていたし、医師の業務を分解していったときに「好きな行動やワクワクする行動なんてひとつもないかも。患者さんの役に立つために医師としての機能を果たすだけなのだから」という考えが自分を支配していたからだ。
ところが。自己理解のセッションが始まってみると、その考えは一瞬で吹き飛ぶことになる。患者から病歴を聞く、哲学書を読む、格闘ゲームをする、物件をネットで調べるという行動は自分が大好きな行動であるが、これらの行動を分解していくと「真実、不変の法則を見つけたい」という欲求が自分を動かしていることに気づいたのだ。正直度肝を抜かれる、というのはこういうことを言うのかもしれない。無料体験分で既にこの発見。もうこのセッションを行ってくれたコーチに感謝が止まらなくなっている。
今回のこのコラム、自分とセッションを行ってくれたコーチの名前を覚えて帰ってほしいという気さえある。
今回コーチを務めてくださったのは岩田悠里さん。コーチングのnoteを書いておられたのでリンク貼っておきます。
初回が終わってちょっとモヤが晴れている。
ワクワクが止まらない。この状態で開業まで駆け抜けたい。100日以上後に開業する医師Dr.Taroでした。
Text / Dr.Taro
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