23年秋、ここ「SAVOR LIFE」にて、本屋が居場所になっているという「職書近接」という独特な働き方を披露していました。
書店さんには僭越ながら、自分の中での本屋づきあいのグラデーションにより「ごちそう」や「日常茶飯」と位置付けたりもしていました。
この1月、自分の活動に本というツールがより深くコミットしてきたことで、頻繁に書店に通う日々は変わらず、けれども今は本のある空間に居心地を求めるよりも、理性的に情報を求めている自分の変化に気づきました。
特に昨年末から今年初めにかけては書店で愛読書の新装版を相次いで見つけ、うれしいとか残念とか、さまざまな気持ちになっていました。今日はいくつかの裏エピソードをつないで紹介します。
まずは、私がとびきりうれしかったブックニュースから。
フランスに通じ、日仏アメリカ、和洋問わず食卓周りのセンスで慕ってきた堀井和子さん。その著書は絶版ばかりです。古本屋で見つけたらいい方。見つけては購入してきた私ですが、Amazonでもなかなか手に入らなくなっていました。
だからこそ旧『早起きのブレックファースト』の白とオレンジのハードカバーや、私のお気に入りで絶版の『2日目のプティ・デジュネ』などの紀行本や古い旅エッセイ集は見たことがないという方も多いかもしれません。
この本に書かれたエッセイの一章は高校生の頃から朗読していたほどの愛読書でした。それがこんなに愛らしいブルーにフランス語デザインの文庫となって『アァルトの椅子と小さな家』とともに2冊、河出書房の新装版となったのを見つけた2025年初、書店でひとり静かに狂喜したのでした。
今回は、これに続くフランス・ライフスタイルエッセイに傾けた情報です。以下はあくまで個人的な私見が入ります。新装版で「素敵になったな」と感じる方もいる一方で私の見解を書きますこと、お許しください。
一方で少し前に見つけていた石井好子さんの伝説の2冊『巴里の空の下、オムレツのにおいは流れる』と『東京の空の下、オムレツのにおいは流れる』。
同じ出版社からの新装版ですが「古風だからこそ素敵」と思っていた草色と淡いピンク色の植物模様で情緒を感じる旧来の表紙の装丁が気に入っていた私には、2024年版がセットで「わかりやすくポップでキュート」になってしまったことが、複雑だった件。
他にもフランス人作家ミレイユ・ジュリア―ノのベストセラー『フランス女性は太らない』(2013年)が、内容はほぼ同一のまま『フランス人はなぜ好きなものを食べて太らないのか』(2024年)と改題して新刊・話題書に入っていたのも複雑だった件。ダイエット観の変化を意識してのことでしょうか。
フランスものは外れますが、ベストセラーの自己啓発書では、自分が読んだとき、ミニマルな表紙が記憶にあったジュリア・キャメロンの『ずっとやりたかったことを、やりなさい』のアニメ的表紙変更にも驚かされました。
うれしいな、さみしいなという個人的な感覚も、俯瞰で見れば書店であたらしい読者に手に取ってもらうときのインパクトや、インスタでのブックインフルエンサー活況時代、デジタルネイティブ世代に表紙で指名買い(買うまで至らずブックマークのみなのかもしれません)されるためのインパクトも意識されているのかもしれません。
古きよきものと、新しくなるものの交差点に立つ私たち。新しくなることのメリットも出版社や著者には読者がより多く手に取る上で、利が大きいものと考えられます。
みなさんは、愛読書のスタイル刷新、どう感じるでしょうか。
私は、この歳にしては、いささか保守的なようです。
買い物の視点では、もし持っているなら、古いものをあらためて再読を。持っていなくて、初めて知ったという方は、新装を機にぜひチャレンジというのもいいかもしれません。
今回思い知ったのは、良くも悪くも、新装、リニューアルのマジック。読者には賛否両論があると思いますが、私は初めて出会ったときの気持ちを大切に読みたいと思います。
Text / Anna Koshizuka(ゆる社会活動家/ケアライター)
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【関連本】『早起きのブレックファースト』
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