キッチンから見える「今」への満足

これまで1LDKや1DK、ワンルームなど、単身者向けの賃貸物件を転々としてきました(同棲・結婚していた時期を除いて)。

単身者向けの部屋を借りた経験のある方には共感してもらえると思いますが、キッチンの作業スペースやシンクがいかにこじんまりしていることか。

ひとり暮らしを始めた20年前のことを思い出しました。大学生で初めて住んだ部屋のキッチンは「このつくり、まな板を使わせる気ないよな?」とツッコミたくなる具合の狭さでした。部屋備え付けの机にまな板を広げて食材を切って、キッチンコンロまで運ぶ……といった工程は必須。

「スペースがなさすぎる」。料理のたびに、場所との戦いのような感覚がありました。料理が好きで、なるべくしたい気持ちがあるので、そんな環境でも工夫して過ごしてきました。直近は1LDKのキッチンで、多少は広くなったスペースをうまく活用していたつもりです。

そんななか、引っ越して環境が変わり、5月から3LDKの賃貸戸建に住んでいます。2010年代半ばに建てられた家で、食洗機のような設備はありませんが、とても綺麗に使われていたことが分かる物件。住み始めて感動したことはたくさんあり、そのひとつを挙げるとキッチンの広さです。

作業台に食材や食器など、必要なモノたちを広げても余白があり、三口コンロも備え付けられていて、背後も人が通れるほど十分なスペースがあります。料理をのびのびと楽しめる場所にようやく巡り会えた気がしました。

新築か築浅かといった「条件」ではなく、自分にとって本当に快適な空間かどうか。そこに気づけたのは、これまでの暮らしの履歴があるからこそです。直近の部屋は新築でしたが、今の方がはるかに満足しています。

私にとって広くて満足

比べるつもりはなくても、たとえば良いグレードの戸建・マンションを購入している他人の暮らしぶりを知ると(賃貸の自分と比べて)「お金持ちだなあ」「家を所有するなんて大人だなあ」といった感想が無意識に浮かぶことがあります。

でも、他人との比較に意味はないのでした。そもそも比べるという発想自体、しなくていいなと分かっています。

ただ、「今」への感謝を深めるには、過去の自分と比べる発想は有効だと思います。「(前の暮らしより)豊かになった」と感じられると、その変化の価値を味わえるようになります。ここでいう「豊か」というのは、物質的なことではなく、心のこと。

家賃は居住する人数(人間はふたり)で割ると、ひとりあたり2,500円、以前より下がりました。外食もしますが過度な贅沢に興味はなく、近所のスーパーや青果店で買った旬の食材で調理ができれば満たされます。

これからも他人の物差しではなく、過去の自分を基準にして、小さな幸せや進歩を大切にして生きていきたいと思います。

Text / 池田園子

【関連本】『お金の増え方は9割部屋で決まる

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