今に集中するために、心と身体、頭の余白を持つ意識

「少なく生きること」に対してより意識的になるにつれ、「禅」に関する本を手に取る機会が増えています。

どの本でも共通して語られているのは、「今」にいかに集中するか、「今」をいかに大切にするかということ。私たちが生きているのは「今」であり、すべてはこの瞬間にあるという考え方が、さまざまな言葉で紹介されています。

直近で読んだ『禅に学ぶ人生の知恵 澤木興道名言集』にも、まさに「今にフォーカスすることの大切さ」が繰り返し説かれていました。「今に集中する」とは、たとえば今取り組んでいることに全力を傾けるということです。

もちろん、自分自身のタスクだけではなく、目の前にいる「人」に集中することも、「今への集中」の一種です。相手が話しているのに、別のことを考えたり、未来に意識を向けたり、スマホを見ながら、気のない対応をしたり。そういう姿勢は、話を聞いているとは言い難い。

今、ここにその人がいるということは、当たり前ではなく、奇跡のような瞬間なのだと思うようになりました。一般的に亡くなるような年齢ではなく、適度に健康体であると油断して忘れがちな視点ですが、つい先日大事な人を失う未来に悲しみを案じて、涙を流した日がありました。

いつ、どんな理由で、目の前の人がいなくなってしまうかは、誰にもわかりません。だからこそ、一瞬一瞬をおろそかにせず、真面目に向き合いたい。

とはいえ、日々の生活の中で、全瞬間に集中することは簡単ではありません。忙しさや考えごとに心がとらわれることもあります。だからこそ、意識的かつ積極的に、“余白”をつくることが必要になります。

余白とは、心の余白、身体の余白、頭の余白。これらがあることで、時間に追い立てられる感覚が和らぎ、他者に向けるまなざしや寄り添い方にも、優しさや柔らかさが宿るのではないでしょうか。

たとえば、5分だけ早く起きてみること。そんな小さな行動の変化でも、自分の中に余白が生まれ、ゆっくり歩けたり、周囲の景色や人を観察したりする心のゆとりが育まれます。逆に、ギリギリまであるいは予定以上に寝てしまうと、自分のことで精一杯になり、他者への意識は後回しにせざるを得なくなる。

「今」に集中することは、目の前(のヒト・モノ・コト)を大切にすること。そのために、いつも余白を持っておくことを意識し続けたいと思います。

Text / 池田園子

【関連本】『禅に学ぶ人生の知恵 澤木興道名言集

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