「今必要?」と問えば「買わない」がラクに叶う

これまでの私なら、旅先で「ここでしか買えない」かつ「欲しい」と感じたモノがあると、迷わず買っていました。人間の細胞は3ヶ月で変わるといいますが、過去の私とは完全なる別人と化しました。今回、買わない選択をしたのです。

先日、比叡山延暦寺に行ったときのこと。目的は延暦寺会館(宿坊)に泊まり、自分と静かに向き合う時間を過ごす、というとかっこいいですが、実際は「精進料理をいただいて、身体を休めたい」という食欲と休欲を叶える目的でした。

叡山ロープウェイの終点、比叡山頂駅到着後、バス停前の土産店を覗いてみると、比叡山限定のお香に目がいきました。

私はお香が好きです。白檀をベースにした香りは好みで、「欲しい」感情が湧き上がるのを自覚したあと、「欲しいのは分かった。では必要?」と自分に問いかけることができたのです。

片道2時間近くかかる比叡山を再訪するのは簡単なことではない。乗り物に乗っているだけでも移動は疲れます。そうやって理由づけて、買う方向へ持っていって、買うことを正当化していたのが以前の私でした。

高野山(宿坊)や屋久島を訪れたときも、同じようにその土地限定のお香を買って帰っていました。

でも、今回は買わなかった。理由は明確です。まだお香をたくさん持っているからです。高野山や屋久島、4年前に京都で購入したお香などが使い切れていません。仮に2日に1本ペースで焚くとして、あと2年は持つと思います。

「欲しい」という気持ちはあっても、「必要ではない」と判断して「欲しい」を吹き飛ばせたのは「自分はすでに満たされているのに、欲しい欲に素直に行動すると、安易に手に入れようとする愚か者」だと認めたからです。

また、直近で300個近くのモノを手放してきた経験も効いています。スパスパ潔く捨てられない性分なので、ちまちまと人に譲りながらモノを手放していくのですが、それはなかなか大変で、心も身体も頭も体力も消耗します。

自ら手放すことを決意したのに、何かが削がれていく、奪われていくような、嫌な感覚。もう味わいたくはありません。だからこそ、「これ以上、手放す手間を増やしたくない」と思えるようになりました。

宿坊の中でも心惹かれるモノに出会いました。比叡山オリジナルブランド「HIEI」のアロマスプレーです。延暦寺の霊水と霊木(檜)、精油が使用された、さっぱりした良い香りでした。

これを嗅いだ瞬間「欲しい」と思いました。本当にちょろい人間だなと自分でも思います。ちょっといいモノに出会うと「欲しい」と盛り上がってしまう。でも、「いつ使う? どこで使う?」と自問すると「必要ではない」に行き着くのです。

すでに我が家には、別の香りアイテムがいくつもあります。お香も香水もトイレ用の芳香剤も。これ以上増やす理由がありませんでした。

結局、物質的な土産は買わず、日本酒の小瓶を購入しておしまい。宿坊での夕食後にひとりで晩酌する目的で、余ったら持ち帰って家族と飲めばいい、という考えで買いました。ただ、夕食が豪華すぎて満腹になり、手をつけずに家に持って帰りましたが。

欲しいモノを「なかなか来られない場所で、ここでしか買えないから」という理由で買うのではなく、「今の自分に必要かどうか」で選ぶようになったのは、私にとって大きな変化です。「それ、今必要?」は自分を制御できる秀逸な問いです。

もし家のお香在庫が1箱以下になっていたら、今回買っても良かったです。でも、まだまだ手元にたくさんある。だから、買わなかった。それが、今の私の選択です。

Text / 池田園子

【関連本】『買わない習慣

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