気になっていた「パン工房 たまや」に、ようやく行くことができました。屋根に大きく「パン屋」と書かれた外観が目を惹きます。定休日に店の前を通る機会が重なり、なかなか縁がなかったのです。
Googleマップを調べた流れで口コミを見ると、「最近はパン屋さんも並ぶところが多いけれど、ここは並ばずに入れて、しかも店主さんとの温かな会話が楽しめる」とのコメントが。へえ、温かそうなお店で良いなあ。価格も良心的でありがたい、との声も。近頃は高級路線のパンも多く、ひとつで400〜500円となると、頻繁にリピートしづらいなと感じます。
夕方に訪問したことから、売り切れた商品が多く、品数は限られていましたが、美味しそうなクリームパン類が残っていたので、4点ほど購入しました。
会計のとき。女性の店主さんがにこにこしながら、「何か鍛えてるの?」と筋トレの動きをしつつ、声をかけてくれました。その日は二の腕がむんっと剥き出しになる、袖の短いTシャツを着ていたので、私のたくましい腕が目に入ったのだと思います。
「はい、鍛えてます。腕がたくましくなりすぎちゃって」と笑いながら答えると、「そうなの?」とさらににっこり。
逆に「店主さんもお仕事でけっこう重いモノを持ちますよね? 小麦粉の袋とか」と振ると、「一度に20kgくらいは持つかな。でも、一瞬だけだから(笑)」と話してくれました。ほんの1分ほどの会話でしたが、自然な笑顔になれる穏やかな時間でした。すべてのお店で、こんな雑談に至ることはありません。だからこそ特別で貴重。
「鍛えてる?」と問われたのは、純粋にうれしかったです。ほっそりした腕の人には言わないでしょうし、私の腕を見て何かピンと来たのか、あるいは話すきっかけをつくりたいと思ってくださったのかもしれません。
帰り道「崩れやすいから気をつけてね」と言われたひとつのパンだけ、手のひらにそっと乗せて帰りました。クリームを詰めたてのパンはずっしりした重みが感じられ、先ほどの楽しいやりとりが脳内にループし、私もほんのり笑みを浮かべて歩いていたと思います。
今朝、パンの写真を撮って載せようと思っていたのに、忘れていました。それ以上に長く記憶に残るであろう、温かなやりとりでした。こういうお店は再訪したいのです。
これからもこういった心がほわっと温まるやりとりが生まれたエピソードを含め、いいなあと感じたお店との出会いを書き残していきます。
Text / 池田園子
【関連本】『京都のおいしいパン屋さん 観光地から歩いていける80軒』
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