思い立ったが吉日という言葉の通り、ピンと来たら動いてみるという選択は、これまでも多くの正解を運んできてくれました。今回もそう。参加したポルトガル郷土料理教室のひとときは豊かな体験となりました。
きっかけは、家の近くにある北野天満宮。その大鳥居横にポルトガル菓子店「Castella do Paulo(カステラ ド パウロ)」があり、物件の内見で付近を歩いているとき、行きたいお店リストに追加したんです。引っ越しから1〜2週間ほど経った頃、お店でテイクアウトをしたとき、店員さんから料理教室の案内チラシをいただきました。
一目見て心が動きました。オーナーご夫妻のご自宅で開催され、ポルトガルの郷土料理を前菜からスープ、メイン、デザートまでフルコースでいただけて、しかも食前酒やワインも付いている。「お料理を作るより、ポルトガルの話を聞いて、食べて、楽しみたい!」という方も歓迎、といったことが書かれてあるのも、気負わず行けていいなあと魅力的に感じました。
ポルトガルという国は少し遠い存在でした。アジア・インド系レストランのように、いたるところにあるわけではなく、かなり珍しい。それだけに「ポルトガルのごはんを食べたい」という気持ちが高まり、即申し込みました。
さて当日。会場となるキッチンは黄色と白、ブルーなどを基調とした、レストランのような雰囲気で、「入場」した瞬間に心躍ります。定員は4〜5人で、アットホームな雰囲気。智子Duarte先生(以下、智子先生)は朗らかで、明るくて、全身から「みんなを楽しませたい!」という思いが伝わってくる、素敵なキャラクターの方でした。
私ともうひとりが初参加、残りのおふたりは2回目、3回目のリピーター。半分が京都以外からの参加でしたが、京都府外からの参加者は全く珍しくなく、日本全国から申し込みがあるそう。
教室は食前酒としてロゼワインと前菜の提供から始まりました。お腹が少し満たされてから調理に入るという流れもうれしい。合間には智子先生がポルトガルの地図を示しながら、同じお菓子でも地域によって差があることを丁寧に解説してくださり、地理や食文化の話も交えて学べる時間になっていました。

クレソンのサラダ。塩・酢・オイル or 塩・レモン汁・オイルの2パターンで食べ比べ
メイン2品に合わせて、白、赤のワインが提供されます。ワインは料理に合わせてセレクトされたもので、プロの方に料理の内容を伝え、ペアリングを依頼しているとのこと。

塩タラとほくほくじゃがいも。卵もたっぷり
さらに驚いたのは、余った料理を持ち帰るためのタッパー持参が推奨されていたこと。けっこうな量をつくってくださるので、全員が欲しい分だけ持ち帰ることができ、自宅でも余韻を楽しめるという心遣いに感動しました。

グリーンピースと丹波あじわい鶏の煮込み。ワインとよく合う
これだけの体験が詰まって参加費は8,000円。高品質な材料やワインをふんだんに使っておられる様子から、この金額でいいのかと心配になるほどです。智子先生は「ポルトガル料理を知って、家庭料理として一品でも作る人が増えるとうれしい」という思いがとても強く、“自分が心からいいと思うポルトガル料理・菓子の魅力を人に伝えたい、広めたい”という情熱で教室を続けていらっしゃるのだと感じました。

伝統菓子「パォンデロー」の作りたてと1日置いたのを食べ比べ
また、参加者同士も和気あいあいとした雰囲気で、年齢も職業も関係なく、呼んでほしい名前を名札に書いて、お互いをその名前で呼び合うというルールも、心地よい空気づくりに一役買っていました。終始笑顔と笑いが絶えず楽しいひとときでした。

食器もおしゃれで気分が上がる
近所に住んでいる方もいて、新たなご縁が生まれる予感もありました。こんな風に「ちょっと気になる」から一歩踏み出してみると、世界がやわらかく広がっていくのだなと、改めて実感しています。
未知なるポルトガルの食文化に出会える贅沢。食材の味を生かした美味しい料理とあたたかな空間の虜になります。季節ごとにレシピが変わり、月に2回ほど開催されていることから、私もまた参加するつもりです。
Text / 池田園子
【関連本】『ポルトガル菓子図鑑』
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