京都に来て、下村敦史作品ブーム

小説や作家との出会いも、人とのそれと同じで、運命的だと感じます。京都に引っ越した5月、そんな出会いがありました。

引っ越し後は徒歩・自転車圏内のスーパーやドラッグストアをチェックし、好みのお店を探すのが恒例ですが、書店巡りもしています。近所に自分の趣味と合う書店があればラッキーです。

初めて立ち寄った「ふたば書房 紫野店」の文庫本コーナーで、何これ気になる……と手に取ったのが、下村敦史さんの『同姓同名』というミステリ小説でした。登場人物が全員同姓同名の「大山正紀」という奇抜な設定に惹かれて。

「大山正紀」が10人以上(?)も出てきます。数人の「大山正紀」が同じ場面に集まって、会話したり集団で行動したりするシーンでは時に混乱しましたが、「どういうこと?」「どうなるの?」と仕掛けの奥深さが面白くてのめり込むように。

そこからしばらくは、図書館で下村さんの小説を借りては読み続ける日々が続きました。最近の私は小説も含め、新作や準新作といえるような刊行されて間もない作品、図書館で予約が混んでいる作品、図書館にない作品はKindleで購入しますが、図書館にある作品は借りるようになりました。

20年で10回に及ぶ引っ越しの末、紙の本もできる限り持たないようにしよう(基本はKindleで管理、読んだら手放すなど)と決めたのです。荷詰めも荷解きもけっこう疲れるんです。また引っ越すだろうから、荷物は少ないほうがいい。

『同姓同名』以降手に取って楽しんだのは、江戸川乱歩賞受賞作品の『闇に香る嘘』(2014)や『叛徒』(2015)『告白の余白』(2016)『黙過』(2018)『絶声』『刑事の慟哭』(2019)『ヴィクトリアン・ホテル』『警官の道(アンソロジー)』(2021)『そして誰かがいなくなる』(2024)など。

『告白の余白』では京都のいけずを存分に味わいつつ震え、下村さんが建築費1億円以上をかけて建てた私邸を舞台にした『そして誰かがいなくなる』では映画に出てくるような豪奢な洋館を自分も動き回りました(脳内で)。

下村さんは京都市出身の人気ミステリ作家で、それもあり京都市内のほかの書店でも、けっこう目立っている印象。町の書店が応援している感じ。私が無知なだけですが、京都に暮らしていなければ、縁がなかった作家さんかもしれません。

下村敦史熱が少し落ち着いてきた頃、別の作家の作品も久々に読みたくなりました。その日も図書館に下村作品を返しに行った際、頭に浮かんだのが村山由佳さんです。長くなるので、続きは週明けに。

Text / 池田園子

【関連本】『告白の余白

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