今日の言葉が、十年後の自分をつくる

言葉の力って、本当に大きい。

親しい人やコーチングをしている相手と、よく話すテーマがある。「どんな言葉を使うか」ということだ。

言葉があるから思考が生まれ、思考が感情をつくり、感情が行動を起こさせる。その先に、豊かな世界が広がっていく。

言葉は、表現手段であると同時に、人生の起点だ。

そう考えると、「ポジティブな言葉を使おう」という話も、少し意味が変わってくる。ただ明るい言葉を選ぶというよりは、思考を前に進める言葉を使う、ということなのだと思う。

たとえば、「なぜできないんだろう」という問いを持った瞬間、頭はできない理由を探し始める。でも、「どうしたらできるだろう」と問いを変えた途端、思考の向きは未来に切り替わる。この違いは、とても大きい。

そんなことを考えていたとき、ふとした出来事があった。

仕事が立て込んでいた日に、珍しい人から連絡が入った。その瞬間、「もー、こんなときに限ってなんだろう。何かトラブルでもあったのかな」と思いかけた。

ほんの一瞬のことだったけれど、その言葉がどこに連れていくかは、もうわかっている。思考は閉じる。感情は濁る。行動は乱れる。

だから、そこで止めた。「いや、違う」と、頭の中で言い直す。「連絡してきてくれてありがとう」

必要だから連絡してくれている。考えたうえで、わざわざ届けてくれている。そう捉え直して、心の中で言葉を置き換えた。

それだけで、景色が変わる。さっきまで生まれかけていた小さなささくれは消えて、代わりに、関係の中に自分がいる感覚が戻ってくる。

言葉は、現実の見え方を変える。

そしてもうひとつ、大事だと思っていることがある。ネガティブな言葉をすべて排除すればいい、という話ではない。「本当にこれでいいのか」「何が足りなかったのか」そんなふうに、自分をよりよくしていくための自問自答のような、意味のあるネガティブは、むしろ大切にしたほうがいい。

ただ、無意味なネガティブ——愚痴や他責、できない理由だけを並べる言葉たち。それは思考も行動も止めてしまう。

だからこそ、自分の中で分類しておきたい。いまの言葉は、前に進むためのものか。それとも、止まるためのものか。もし後者だと気づいたら、その場で取り消す。

もうひとつ。いい言葉を使うというのは、きれいな言葉を並べることではない。自分が言ったことに、自分の行動がついていくことだと思う。

「やります」と言うなら、やる。「大事にしたい」と言うなら、大事にする。言行一致したとき、その言葉は初めて力を持つ。

日々、自分が使う言葉の総量の中で、前に進む言葉をどれだけ増やしていけるか。どれだけ、自分の思考をひらく言葉で満たせるか。

まだまだ、うっかりネガティブな言葉は出てしまう。でも、そのたびに気づいて、取り消して、言い直す。その繰り返しでいいのだと思う。

言葉は、あとからでも選び直せる。だから今日も、少しだけ意識してみる。どんな言葉で、この一日をつくるかを。今日の言葉が、明日をつくる。一週間をつくる。一年をつくる。そして、十年先の自分をつくっていく。

Text / 池田園子

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