その「ちょっと」が、暮らしを変える

私の暮らしの根っこには、「今あるものを生かす」という考え方があります。

物を増やさないとか、無駄にしないとか、そういう意味ももちろんあるのですが、日々の料理においては、よりやわらかい感覚です。

冷蔵庫を開けて、「これをどう使おうかな」「どうしたら、Taroがちょっと喜ぶかな」と考える。この「ちょっと」が、けっこう大事。

週末、Taroが昼にラーメンをつくってくれました。

醤油ラーメンで、ニンニクがたっぷり入っていて、それはもう、食後どころか翌日まで「私はニンニクを食べました」と全身から発している状態に。けれど、とてもおいしかったのです。

なかでも驚いたのが、チャーシューでした。お店で食べるような味で、肉のうまみに溢れていて。

量が多めだったので、翌日分も残りました。Taroは「明日も食べたい」と言っていました。

やったー! 夜ごはんの一品はこれで決まりだな。内心喜ぶ私。

メインのタンパク質がすでにある。これは、ありがたい。夕飯づくりがラクになる。でも、そのまま出すだけでは、前日とあまり変わらない。

おいしいものは翌日もおいしい。それはそうなのですが、少しだけ変化があったほうが、食卓は楽しくなる気がするのです。

そこで冷蔵庫を開けると、卵がありました。

ゆで卵をつくって、残っていたチャーシューと一緒に漬けておきました。ただそれだけです。特別な料理をしたわけでもないし、買い足したわけでもない。ささやかなプラスアルファ。

夜、食卓に出すと、Taroが言いました。「わー、卵もある!」 そのひと言で、私は「よし!」となりました。

大げさなことではないのです。凝った料理でもないし、誰かに見せるための食卓でもない。ただ、わずかに変化をつけた。その結果、相手がちょっと喜んでくれた。

それだけで、こちらもうれしくなるのです。

料理は、毎日のこと。ただやるだけだと、こなすだけの時間になります。でも、「どうしたら喜ぶかな」という視点をひとつ入れるだけで、それは創造的な時間になる。

これは、料理に限らなくて。

メールを書くことも、資料をつくることも、誰かに何かを渡すことも、部屋を整えることも。そこに「相手はどう受け取るかな」「何があったらうれしい、と感じてくれるかな」と考える余地があるだけで、ルーティンではなくなります。

自分が大切にしたい人や、日々関わる人に対しては、できる範囲で「どうしたら喜ぶかな」と考えてみる。そのほうが、結局こちらも楽しい。

今あるものを生かす。小さな変化をつける。相手の顔を思い浮かべる。たったそれだけで、冷蔵庫の中の残りものは、昨日の残りではなくなります。

それは、今日の小さな企画になる。

例えば、チャーシューに卵を足すだけで、夕飯は少し新しくなる。その小さな新しさを、誰かが喜んでくれる。そんな日々の積み重ねが、暮らしを創造的なものにしていくのだと思います。

Text / 池田園子

【関連本】『本当に大事なことはほんの少し

毎日をもっと楽しむヒントをお届けします。
「SAVOR LIFE」では、生活をより豊かにするためのアイデアや情報を発信しています。会員様限定のお知らせや限定コンテンツをニュースレターでお届けします。ご登録ください!