Amazonの「気になるリスト」に入れていた一冊がありました。
佐賀晶子さんの『“働く”を自由にデザインする おんな・ひとり・フリーランス』(同文舘出版)。表紙を見かけるたび、「あ、あの本だ」と目が止まる。まだ買わないけれど、頭の片隅から消えない。そういう本ってありませんか。
たぶん、タイトルの「おんな・ひとり・フリーランス」という三つの言葉が、自分のこれまでの歩みとどこか重なっていたからだと思います。
会社の役員として働きながら、2012年から個人事業主としても仕事を続けてきて、もう14年。10年前に離婚も経験して、今はTaroと暮らしているけれど籍は入れていない。「おんな」で「ひとり」で、半分「フリーランス」。タイトルの三つの単語に、自分のタグが引っかかる。そんな感じだったのだと思います。
本を読む前に、著者に会ってしまった
ところが先日、思いがけず、その晶子さんご本人にお会いする機会がやってきました。
京都でつながりのある方が、紹介してくださったのです。本を読む前に、先に著者に会う。しかも、ずっと気になっていた本の。これは順番が逆だぞ、と思いながらも、少し運命的な気もしました。
お話しして、晶子さんという人に興味を持って、別れてすぐKindleで買った本を開きました。結果、「フリーランス指南書」ではなく、自分の働き方や生き方をひとつずつ点検していくような読書体験になりました。何度も立ち止まり、ハイライトを引き、また戻る。読み終えるのに時間がかかったのは、内容が難しいからではなく、自分の話としていちいち考えてしまうからでした。
ちなみに、晶子さんが独立されたのは39歳のとき。私がこの本に出会ったのも、ちょうど39歳が終わる頃。勝手に親近感を覚えました。広報コンサルタントでありながらパーソナルコーチでもあるという、ひとつの肩書きに自分を閉じ込めない働き方も、先輩としてとても眩しく映りました。
「役に立っている」の外側に、自分はいるか
なかでも、最初にぐっと胸をつかまれたのが、この一節です。
晶子さんはコーチングの現場で、「私は他者の役に立っている。だから自分には価値がある」と感じているクライアントがとても多いことに触れています。
——これは、私自身が何度もぐるぐるしてきたテーマでした。
何かに貢献している証がないと、自分の存在意義を感じられない。役に立てている実感がないと、「私って、生きてる意味あるんだろうか」と揺らぐ。
「生きているだけでいい」という言葉の正しさは、頭ではわかっています。人の価値は、成果や貢献だけで決まるものじゃない。それも、わかっている。
でも、いざ自分のこととなると、ふと苦しくなる瞬間があるのです。誰かの期待に応えられているか。関係者の役に立てているか。評価されているか。気づけば、自分の価値を「外」に預けてしまいそうになる。
晶子さんは、40代半ばを過ぎたあたりから、「誰かの期待に応えても、応えていなくても、私はここにいて大丈夫」と思えるようになったといいます。その理由として書かれていたのが、「自分で仕事をつくれるようになったから」という言葉でした。
「自分で仕事をつくる」というのは、営業して案件を獲得することではありません。自分にとって無理なくがんばれる道を選ぶこと。自分にとってちょうどいい働き方を見つけること。自分はどうありたいかを起点に、そのあり方に合う仕事を形にしていくこと——。
誰かと比べて「同じ年齢の人がこれだけ稼いでいるから、私も」と思い始めた瞬間に、働くことは苦しくなります。けれど「自分はこれだけあれば幸せだ」と知っていれば、基準は自分の内側に持つことができる。
自分にとっての「足りている」を知ること。
自分にとっての「ちょうどよさ」を選ぶこと。
それが、「働く」を自分でデザインする、ということなのかもしれません。

仕事は、ポートフォリオで考える
もうひとつ、この本で大事だなとあらためて感じたのが「仕事をポートフォリオで考える」という視点です。
稼ぐ仕事、学びになる仕事、心が満たされる仕事。仕事には、それぞれ違う役割がある。すべての仕事が、100%楽しくて、100%報酬も高くて、100%将来につながる、なんてことはなかなか難しい。
だからこそ、一つひとつの仕事を単体で見て一喜一憂するのではなく、全体のバランスで考える。どの仕事が生活のベースを支えてくれて、どの仕事が学びをくれて、どの仕事が未来の種になるのか。投資のポートフォリオを組むように、働き方も意識的に組み立てていく。
この発想は、私自身の働き方の悩みにも、すっと答えをくれました。
「この仕事、報酬は控えめだけど、なんとなく続けている」——もし仮に、そういう仕事があったとしたら。でも、ポートフォリオで見れば、それは「学びの仕事」だったり「将来の種」だったりするのかもしれない。仕事ごとに役割が違ってもいい、と思えるだけで、心がラクになりませんか。
目の前の仕事を、丁寧に。でも、余白も忘れずに
晶子さんは、もうひとつ大切な姿勢として「目の前の仕事に、真摯に取り組む」ことを挙げています。
派手なことではありません。今ある仕事に誠実に向き合う。一瞬一瞬に集中する。その積み重ねが、次の仕事を呼んでくる。
これは、個人としても会社としても、私自身が何度も実感してきたことです。目の前の仕事を丁寧にやっていたら、次の相談が来る。仕事の規模が広がる。これまでとは違う役割を任される。そんなふうに、仕事が地続きで広がっていくことがある。
ただし、と晶子さんは付け加えます。目の前の仕事に追われるだけではなく、余白をつくることも大切だと。余白をつくって、次の種をまく。目の前に集中しつつ、未来への循環は止めない。
仕事は止まるものではなく、ぐるぐると回っていくもの。今ある仕事を育てながら、次の可能性も少しずつ準備していく。そのサイクルを回し続けることが、長く働き続けるためのコツなのだと感じました。
ちなみに、本書には「仕事が途切れない人の特徴」も挙げられています。
クライアントのニーズを的確に捉えること。コミュニケーションを怠らないこと。自分の得意領域を発信し続けること。そして、学び続けること——。
特別な魔法はひとつもありません。でも、地味で、誠実で、続けるほどに効いてくる。派手な成功法則ではなく、漂えど沈まない人のあり方、のようなものがここには書かれています。
働くすべての人に向けた本
『“働く”を自由にデザインする おんな・ひとり・フリーランス』は、働くすべての人に届く本だと思います。書名やサブタイトルからフリーランス向けの本に見えるかもしれませんが、読み終えてみると、もっと広い射程を持っていることがわかります。
会社員でも、経営者でも、複業をしている人でも。これからの働き方に少しでも迷いがある人には、必ずどこかで線を引きたくなる一節があるはずです。
誰かの期待に応えるためだけではなく、自分がどうありたいかを考える。
仕事をひとつの正解に閉じ込めず、複数の軸で組み立てる。
目の前の仕事を大切にしながら、余白をつくり、次の種をまく。
働くという選択は、生き方の選択でもあります。だからこそ、自分の働き方を自分でデザインすることは、自分の人生を自分の手に取り戻すこと、でもあるのだと思います。
晶子さんとの出会いをきっかけに、この本に出会えてよかった。
そして願わくば、これを読んでくださった誰かの「気になるリスト」に、この本がそっと加わったら、うれしいです。
Text / 池田園子
【関連本】『“働く”を自由にデザインする おんな・ひとり・フリーランス』
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