いいところで終われること

「話を終える力」について、ときどき考えることがあります。

話し始めることは、できる。自分の考えを言葉にすることも、慣れればできるようになる。けれど、ちょうどいいところで話を終えることは、意外と簡単ではない。

まだ言いたいことがある。補足したい。ディティールまで正確に受け取ってもらいたい。もう少しだけ、自分の考えをわかってほしい。そんな気持ちは、誰の中にもあるものだと思います。

でも、人と一緒にいる場の時間は、自分だけのものではない。自分が長く話せば、そのぶん誰かが話す時間は短くなる。自分の言葉で場を満たせば、そのぶん誰かの言葉が入る余白は少なくなる。

だから私は、短く話せる人に惹かれます。

短く話す人は、言いたいことが少ない人ではなくて、言いたいことの中から、いまこの場に必要な分だけを手渡せる人です。

話が上手い人というと、面白く話せる人、わかりやすく説明できる人、場を盛り上げられる人を思い浮かべやすい。けれど一緒にいて心地いいのは、話し方ではなく、終わり方がうまい人なのかもしれません。

自分の話を切り上げられるのは、頭の中が整理できていて、かつ場の全体が見えているからです。自分の内側と、自分の外側。その両方が見えている人は、ちょうどいいところで言葉を止められる。

時間を守ることは、几帳面であることではありません。人の時間を奪わないこと。人の言葉が生まれる余白を残すこと。自分だけで場を埋め尽くさないこと。それは、やさしさの一種だと思います。

たくさん話すことより、いいところで終われること。そんな「終わる力」を持っている人でありたいな、と願います。

Text / 池田園子

【関連本】『あなたは話せば話すほど、嫌われる人? 好かれる人?

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