「比べないことは大事だ」とは、よく言われます。私が最近学んでいる仏教でも、「慢(まん)」という概念があり、他者と自分を比較して優劣を測る心の働きを、苦しみの原因のひとつとして説いています。
もちろん、人は社会の中で生きている以上、誰かと自分を比べてしまうもの。比較することで「もっとがんばろう!」と前向きになれることもある。視点を相手ではなく自分自身に戻せるなら、比較も悪いものではないのかもしれません。
けれど、比べることには、やはりデメリットが多いと感じます。みんな、そんなことは分かっている。ただ、分かっていても、やってしまう。

たとえば、同世代の誰かが大きな事業をしていたり、社会的に成功している姿を見たとき。「それに比べて自分は」と思い始めると、心は暗い方へと引っ張られていきます。本来なら、自分の今日を生きればいいだけなのに、いつの間にか他人の物差しで自分を測ってしまう。
ものを買うときも同じです。今持っているものと新しいものを比べ、別のブランドを調べ、気づけば時間と気力を大量に消費している。本当に必要な買い物なら意味もあるでしょう。でも、ただ「欲しい」という気持ちから始まった比較なら、そもそも比べる必要がないことも多い。
最近、自分の中で小さな発見がありました。
先日、アンジーの森英信さんが、ビジネス英語のフレーズを集めた本『Tech Leaders’ English』を出版されました。こちらを拝読した感想を伝えようとしたときのことです。私はうっかり、「森さんのような英語力はまったくありませんが」みたいなことを書き出しそうになりました。
でも、途中で気づいたんです。これは、言わなくていいな、と。
森さんと私は別の人間です。英語力を比べる必要もないし、その前置きを読ませる必要もない。むしろ余計な一文が増えることで、森さんの時間を奪うだけだ。そう思って、その言葉は消しました。
比べることは、心の中だけで起きるものではありません。文章にも、会話にも、ついにじみ出ます。「誰々さんに比べると私は〜ですが」と口にした瞬間、本題でないものが入り込んでくる。自分の時間を使い、相手の時間も使わせてしまう。
だから最近は、立ち止まって考えるようにしています。
この比較は、本当に必要なのか。その言葉を足すことで、誰かの役に立つのか。冷静に問うと、これいらない、すぐ本題に入りなさい、と言えるものばかりだと気づきます。
比べないと決めるだけで、かなり楽になります。自分を小さく見せるための比較も、誰かを大きく見せるための余計な前置きも、なくていい。必要なのは、比べることではなく、自分の軸に戻ることだと思います。
Text / 池田園子
【関連本】『恐れることは何もない』
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