友達は、減ってもいい

「友達」というテーマは、いつもどこかで語られている気がします。

大人になると友達ができにくい。ライフステージが変わって、昔の友達と話が合わなくなった。結婚、出産、仕事、住む場所の変化で、自然と疎遠になった。友達付き合いに疲れた——。そういう話は、よく聞きます。

一方で、「友達が増えすぎて困っている」という悩みは、聞いたことがありません。友達は、増える分には問題にならないらしい。減る方向にだけ、うっすら不安がついてくる。

断捨離という言葉は、物にも人間関係にも使われるようになりました。それなのに、友達が減ることだけは、なぜかまだ「寂しいこと」の文脈で語られがちです。手放すのは良いこと、減るのは悲しいこと——その微妙な違いは、いったいどこから来るのでしょう。

でも、友達が減ることは、ネガティブなことなのか。

私は、あまりそうは思っていません。その時点で、その人との関わりが自然に必要ではなくなったから、距離が生まれる。それだけのことだと思っています。必要な縁は、必要なタイミングでできる。そうでない縁は、少しずつ薄れていく。冷たいことではなく、むしろとても自然なことではないかと。

だから私は、関係を維持するためだけに無理に連絡を取ることがありません。「最近どう?」という用事のない連絡もしない。基本的には、用事があるときに連絡する。それくらいの距離感が、自分には合っていて。

そんなことを改めて考えるきっかけになったのが、ライターで編集者の天野夏海さんと横川良明さんによる新作ZINE『一人でも生きていけますが シングル10人がやっている友だちとの付き合い方』でした。

内容は、30代半ばから50代のシングル10人に「友だちとの付き合い方」を聞いたインタビュー集です。各インタビューの冒頭には、90年代から2000年代にかけて流行ったプロフィール帳のような「友達シート」があって、そこに友達の人数や定義が書かれている。その作りも含めて、すごくよかった。

最初に目次を眺めたとき、面白い予感しかありませんでした。

だって、「友達43人いる30代女子のパワフル交際術」「大病をした私が友だちを4人にまで減らした理由」「50代からの有事に役立つ友だちガイドライン」が同じ一冊に並んでいる。

この振れ幅こそが、友達というテーマの面白さ。病気をきっかけにあえて友達を減らした人、推し活を通じてできた友達との付き合い方を語る人、ゲームを通じて友達になる人。友達の定義は、本当に人それぞれで。

著者ふたりは「友達礼賛のZINEにはしたくなかった」と言っています。友達の重要性が高い自分たちでも、会うのが面倒になることも、帰宅後に立てないくらい疲れることもある。「友達、最高!」だけでは語れないものが、友達関係にはある。その正直さが、このZINEを読んでいて心地よかった理由のひとつだと感じます。

友達というものは、その時々で形を変えるものだと捉えています。

便宜上「友人の○○さんです」と誰かを紹介することはある。けれど、自分の心の中で本当に「友達」と認定している人は、きっともっと少ない。

今、関わっている人。今、関わりたい人。今、この人と時間を使いたいと思える人。

私にとっての友達は、そういう存在に近いのかもしれません。「必要な人」という言い方をすると少し冷たく聞こえるかもしれませんが、人生の時間は有限です。知り合った誰とでも同じように関わることはできません。だからこそ、今の自分が誰と時間を使いたいのかに、正直でいることは大事だと考えています。

私はあまり、過去を見て生きていません。過去を大切にしていないという意味ではなく、正確に言うと、今にフォーカスして生きている。今、手が届く範囲にいる人。今、日常の中で関わっている人。今、会いたい人。そういう人たちとの関係を、丁寧にできれば十分なのではないかと。

友達は、多ければいいわけではない。長く続けばいいわけでもない。減ったからといって、人生が寂しくなるわけでもない。

このZINEを読み終わり、いろんな人と「友達」について話してみたくなりました。

あなたにとって友達は何人いますか。どこからが友達ですか。何を一緒にしますか。長く会っていなくても友達ですか。用事がないと連絡しない相手は、友達ではないのでしょうか。

答えは、人の数だけあります。友達について話すだけで、その人の生き方や、時間の使い方や、大切にしているものが少し見えてくる気がします。それが、このテーマの面白さだと思うのです。

Text / 池田園子

【関連本】『一人でも生きていけますが シングル10人がやっている友だちとの付き合い方

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