雨の日だから、行く

近所に気になるお店があると、あえて雨の日に行くことがあります。

雨の日は、やはりお客さんが少ないものです。だからこそ、そんな日に誰かが訪ねてきたら、お店の方も少し喜んでくれるのではないか。そんな気持ちがあります。もちろん、わざわざ遠くまで出かけるわけではありません。近所にある未開拓のお店なら、天気があまりよくない日こそ寄ってみる。小さな応援のような感覚で。

それに、雨の日は顔を覚えてもらいやすい気もしています。お客さんが少ない分、店主さんと自然に話せることも。もしそのお店がよかったら、きっとまた行くことになります。そのときに、少しでも覚えていてもらえたらうれしい。そんなささやかな期待もあります。

先日、喫茶店を兼ねたコーヒー豆の焙煎所に行きました。その日は午前も少し雨が降り、夕方にかけて雨が降る予報で、店を出る頃にはまた雨が降り始めていました。店内にはたまたま他のお客さんがおらず、私一人。おかげで店主さんとゆっくり話すことができました。

豆の焙煎には20分ほどかかるとのこと。すると店主さんが、「よかったら飲んで待っていてください」と、別のコーヒーを出してくださいました。それが、ちょうど気になっていた豆のコーヒーだった。

混んでいる時間だったら、そんなサービスはなかったでしょう。雨の日だったからこそ生まれた、少し特別な時間でした。時に店主さんのお顔を見ながら話し、本を片手にコーヒーを飲みながら豆が焼き上がるのを待つ。その20分が、思いがけず豊かなものになりました。

天気の悪い日は、外に出るのが少し億劫になる日でもあります。でも、近場の気になるお店なら、あえてそんな日に行ってみるのもいいものです。空いているからこそ味わえる時間があり、雨の日だからこそ生まれる出会いがあります。

私はまた、そのお店に行くつもりです。次はあの豆を買いに。

雨の日に店を訪ねる。小さなことだけれど、私にはその20分が、しばらく忘れられないものになりました。

Text / 池田園子

【関連本】『雨の日が好きな人

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