ひとりでは届かなかった場所へ

先日のセッションで、私は自分が恥ずかしくなった。

この半年ほど、人から悩み相談を受ける機会が増えていた。そのときの自分の関わり方について話しているうちに、ふと気づいたことがあった。

私は、相手に「幸せな選択をしてほしい」と願っている。

相手のためを考えていたつもりだった。でも、その「相手のため」が、かなり独りよがりだったのだと気づいた。

自分でコントロールできることに目を向ける。物事の捉え方を変える。自分を不幸にする考え方から距離を置く。自分が心地よいと感じる方を選ぶ。私はそうした言葉を、相手に向けていた。きっと間違ってはいない。でも、相手がその正論を求めていたとは限らない。

ただ、聞いてほしかっただけかもしれない。共感の相槌を欲していただけかもしれない。

それなのに私は、「幸せになるには」「前に進むには」という考えで、相手が求めていないものを差し出していた可能性がある。

正論が必要かどうかはもちろん、幸せの定義も、人によって違う。そのことに気づいたとき、どれほど善意があったとしても、相手が求めていないことをするのは的外れなのだ。

では、今後どう振る舞うか。出てきた答えは、とてもシンプルだった。

「ニーズを聞く」ということ。

相談を受けたときに、解決へと導く動きにいきなり入らない。まず、相手に聞く。

「私には何ができますか」
「あなたは私に何を求めていますか」

この問いを置くだけで、関わり方はきっと変わる。相手のニーズを聞くことは、相手にとって必要なものを差し出すことでもあるし、自分の役割を見誤らないための行動でもある。

もちろん、「話を聞いてほしいだけで、意見はいらない」と言われたら、「それは私には難しい」と伝えて引く。相手と私のニーズが合わないなら、無理に合わせようとしないほうがお互いのためだ。

しかし、この言語化は、私ひとりではたどり着けなかった。

久しぶりにコーチングを受けている。お願いしているのは、近藤令子さん。約10年前に仕事でご一緒したことがある方だ。数ヶ月前、SNSで体験セッションの案内を見かけて申し込んだ。終わったあとに「この人から受けたい」と確信した。コーチングは相性が大きい。令子さんのナビゲートによって、自分の中からこんなにも言葉が出てくるのかと驚かされる。

自分の具体的な経験と結びつき、「ああ、私は独りよがりだったんだ」と腹の底から悟る感覚は、ひとりで考えていても出てこなかった。令子さんとの対話の中で、少しずつ引き出されていった。質問され、話し、また考え、言葉にしていく。その往復の中で、自分でも驚くほどまとまったシンプルな言葉が、次々と出てきた。

コーチングは、コーチに答えを教えてもらう時間ではない。自分の中にあるものを、対話によって掘り起こしていく時間だ。

噛み合ったときには、自分ひとりでは届かなかった場所に、ふっと手が届く。その場所から出てきた言葉は、ただの気づきでは終わらない。明日からの行動を変える力を持っている。

Text / 池田園子

【関連本】『Coaching A to Z 未来を変えるコーチング

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