フライング、という言葉がある。
スタートの合図より先に、つい動いてしまうこと。ルールのある場面では、もちろん反則になる。みんなが同じ条件で並ぶために、合図を待たなければならない。
でも私は、競う相手が自分自身であるときは、フライングしてもいいと考えている。

「バーピージャンプ100回」を習慣化して9か月経った。HIITの一種で、30秒間で10回バーピージャンプをして、15秒休んで、また次のセットに入る。これを繰り返して100回。
3秒に1回のペースで飛べばいい計算だけれど、3セット目くらいから、かなりきつい。息は上がるし、心拍数も上がる。「あー疲れた」「やめたい」が頭を占めるときも。
でも、続けていると、少しずつ身体が慣れてくる。今では、25秒で10回を終えられるようになった。つまり5秒余る。そのあと休憩があるから、合わせると20秒くらい休めることになる。
本当は、ギリギリまで休みたい。息も上がっているし、しんどいし。
でも最近は、休憩が終わる2〜3秒前に、次のセットを始めてしまう。
それは、自分を追い込むためというより、「やりたくない」という気持ちが生まれる前に動こう、という意識の表れ。
休憩時間が終わる直前まで待っていると、「ああ、次の回、やりたくないな」が大きくなっていく。まあ、始めたからには、最後までやり切るのだけど。
ただ、その気持ちが立ち上がってしまうと、次に動き出すのが少し重くなる。身体が疲れているだけではなく、心までへたり込んでしまう感じがある。だから、その前に始める。
まだ休憩時間は残っている。もう少し休んでもいい。でも、あえてフライングする。気持ちが「面倒」と言い出す前に、先に動き出してしまう。
やる気が出てから動くのではなく、動いてしまうことで、やる気がなくなる隙をつくらない。気合いで乗り越えるというより、迷う時間を短くしている感覚。
フライングは、いつでも悪いわけではない。
誰かと競う場面で、合図より先に出るのは反則。でも、競う相手が自分自身であるときは、むしろ少し早く動き出した方がいい。
やる気がなくなる前に、始める。考えすぎる前に、さっと動く。
「もう少し休んでから」と思っているうちに、気持ちは重たくなる。だったら、まだ完全に覚悟が決まっていなくても、先に一歩出てしまえばいい。
そのフライングは、反則ではない。むしろ、自分を前に進めるための、小さな工夫。
Text / 池田園子
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