一面だけで、判断しない

すごーく今さらながら、『ラヴ上等』というヤンキーの恋愛リアリティ番組を見ている。

『栄光のバックホーム』目当てに、一年半ぶりにNetflixを再契約した。ひと通り見終えたあと、「そういえば、これも気になっていたな」と思い出し、軽い気持ちで見始めたら、思いのほか面白い。そして見ながら、考えさせられることがあった。

人には、その人ひとりと向き合っているだけでは見えてこない面があるな、って。

一対一で話しているときには、その人の言葉や表情、考え方が伝わってくる。けれど、その人が別の誰かと関わっている場面を目にしたとき、「あ、この人にはこんな一面もあるんだ」と知って、心が動くことがある。

人の輪郭というのは、他者との関係の中で、くっきりと浮かび上がってくる。

自分にしたってそう。誰かと関わることで初めて現れる自分がある。家族といるときの自分、仕事の場面での自分、友人といるときの自分、初対面の人と話すときの自分。それぞれ少しずつ違っていて、でも、どれも紛れもなく自分だ。

友人の矢野麻子さんが、ときどき口にする「球体思考」という言葉がある。一つの面だけを見るのではなく、いろいろな角度から眺めることで、ものごとの受け止め方が変わる、ということ。

『ラヴ上等』を見ていて、この言葉を思い出した。

人間も平面ではなく球体。ひとつの面から見た印象だけで、その人を分かった気になってはいけない。横から見れば違う顔があるし、少し離れて見ればまた別の表情が見える。誰かと関わっているときにしか現れない面もある。

それは、実際に他者と接していても思うことだ。かつて、ある人の一面だけを見て「この人って、ほんと幼稚だな」と見下したことがある。でも、あとになって、そうやって決めつける自分の態度こそ未熟だったのだと気づいた。

恋愛リアリティ番組の面白さは、誰と誰がゴールインするのかを見ることだけではない。人が人に近づこうとするとき、うまくいかずに揺れるとき、自分の弱さや不器用さがふと顔を出すとき。そうした場面にこそ、人間の多面性が表れる。

一対一で向き合うことは必要。けれど、それだけでは見えてこないものもある。

その人が他の誰かに対してどう動くのか。どんな顔をするのか。そうした姿を見ることもまた、相手を知るために必要なことなのだと思う。

配信から半年経って見始めた『ラヴ上等』だけれど、面白くてあっという間に視聴を終えてしまった。

そして、画面の向こうの恋愛模様を眺めながら、あらためて思った。人は、多面的だから面白いんだよなあ、と。

Text / 池田園子

【関連本】『「自分」の生き方

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