異業種交流会。これまで何度も参加してきたけれど、一向に得意にならない。
自ら話しかけに行って、名刺を交換。その後は、相手のビジネス話をひたすら聞くだけで、自分のアピールをする間もなく終わってしまう(笑)。お互い笑顔で話を聞き合っているように見えて、心のどこかでは「この人とは仕事につながるだろうか」と値踏みしている。そんなビジネスのアピール合戦のような空気に、私はいつもなじめずにいた。だから、1時間くらいで、誰にも気づかれずに途中退席する(笑)。
今回も、このイベント名だけを見ていたら、参加していなかった。ではなぜ足を運んだのかというと、イベントを教えてくれた方がとても面白いから。
もう一つ、会場にも惹かれた。京都・木屋町三条にある「モダンタイムス」。ホームページを眺めているうちに、一度は足を運んでみたいと思うようになっていた。

モダンタイムスは、ライブハウスでありダイニングでもある。昭和レトロな店内で、席に着き、おいしい料理を味わいながら、お酒を片手に音楽を聴ける場所。定休日を除けば、ほとんど毎日何かしらの催しが開かれている。
足を運んでみると、よくある異業種交流会とはまったく違っていた。場の中心にあったのは、音楽だった。飲食しながら、ステージを見て、音楽を聴く。その間に、近くにいる人と言葉を交わす。音楽が軸にある。
表現された内容も新鮮だった。
たとえば、白田将悟さんは、ループペダルという機材を使って演奏していた。その場で録音した自分の声や楽器の音を繰り返し再生しながら、新しい音を重ねていく。一人で舞台に立っているのに、少しずつ音が増えていき、いつしか幾重もの音に包まれている。観客の声を取り込み、それを演奏の一部にすることもあった。
仕組みを完璧に理解できたわけではない。それでも、今その場で生まれた生の音が生かされ、次の音と重なっていく様子を感じるのは興味深かった。
そして、この日初めて「手話歌」にも出会った。
出演したのは、高槻サインオーケストラのお二人。音楽と歌詞が流れるなか、口を動かしながら、声を出さずに手話で歌っていた。
私は手話を知らない。それでも、歌詞と身振りを見比べながら、「これは“心”だ」「これは“愛”だ」と、意味がすっとつながる瞬間がいくつもあった。
お二人は、とてもいい笑顔で歌っていた。純粋に、その表情や眼差しの奥に、優しさと経験の積み重ねのようなものが滲み出ていて、それがなんだかとても壮大で美しいものに見えた。歌は、耳以外でも楽しめるのだと感じた。
前半が終わったころ、店長のヒロさんが「せっかくの異業種交流会なので、一人ずつ自己紹介をしましょうか」と声をかけた。参加者は順に、自分のことや仕事のことを話していった。
その時間も、今までにない温かさがあった。
大勢の前で話すとき、頷きながら聞いてくれる人は、普段ほぼいない。話す側からすると、みんな無表情に見えて、それだけで結構萎縮してしまうんだけど(笑)。ましてや、あんなに優しい表情を向けてもらうことは、かなり稀。そこにいる人たちが、一人ひとり温かさを持ち寄って、その場が温かく感じられるようだった。
出演者の一人であるシンガーソングライターのKizashiさんとも、あとで話をした。「温かい場所ですね」と言うと、Kizashiさんも同じように、モダンタイムスならではの、特別な温かさを感じているようだった。
その後もほとんどの方と個別に話をした。仕事の話もしたけれど、いつもとは違う感じ。人と人が出会い、音楽や食事を一緒に楽しみ、その延長として言葉を交わす。私にとって、こういう異業種交流会は初めてだった。
帰り道、やはり、面白いと思う人や信頼できる人からの誘いには、乗ってみるものだと再認識した。
異業種交流会は苦手だから、やっぱり今もあまり行きたくはない。でも、モダンタイムスで開かれる、音楽が軸にある交流会なら参加したい。あの場に共感して集まる人たちには、また会いたいなと思えたから。
Text / 池田園子
【関連本】『モダンタイムス』
「SAVOR LIFE」では、生活をより豊かにするためのアイデアや情報を発信しています。会員様限定のお知らせや限定コンテンツをニュースレターでお届けします。ご登録ください!



