知人が、パートナーを探すために婚活パーティーへ行き始めたという。どんな人がいたのか、どんな雰囲気だったのか。そんな話を聞いていて、私が一番食いついてしまったのは「シングルマッチ」という言葉だった。
その婚活パーティーでは、男女が一対一で話す時間を「シングルマッチ」と呼ぶらしい。
シングルマッチ。それを聞いて、私はすぐにプロレスを連想した。プロレスで「シングルマッチ」といえば、レスラー同士が一対一で戦う試合のこと。
7〜8年前、プロレスにのめり込んでいた時期があるし、今は格闘技をときどき観る。だから婚活パーティーという場で「シングルマッチ」という言葉が使われていると知った瞬間、思わずニヤリとしてしまった。「このパーティーを企画した人は、プロレス好きなんじゃない?」 そんな予想も知人に向けて得意げに話していた。
しかし。今、こうして書きながら気づいた。冷静に「それは、違う」と思ったし、派手な勘違いが恥ずかしくなった。
「マッチングアプリ」から来ている言葉だ。一対一の出会いを指す「シングルマッチング」を、略して「シングルマッチ」と呼んでいるだけなのだろう。考えてみれば、その方がずっと自然な成り立ちだ(まあ、プロレスや格闘技好きな担当者という可能性も、なくはないだろうけど)。
今、自分は婚活アプリにもマッチングアプリにも縁がない。だからその言葉の一番自然な出どころが、頭に浮かばなかった。かわりに、自分になじみのあるプロレスや格闘技のほうに、勝手に引き寄せて読んでしまっていた。

同じ一つの言葉と出会っても、それぞれが持っている世界を通して、何かをイメージするのは自然なことではある。「シングルマッチ」という五文字から、ある人はアプリでの出会いを思い浮かべ、私はリングの上の一対一を思い浮かべる。どちらも、その人の中に元からあったものが、勝手に引っぱり出されてきただけだ。
余談になるけど、このとき話を聞いて驚いたのは、今の婚活パーティーでは、誰が誰と話しているのかが、ほかの参加者から見えないようになっているということだった。
大学生や20代前半のころ、婚活パーティーに行ったことがある。もう15年から20年ほど昔の話。当時は大きな会場に男女が集まり、男性が順番に女性の席を回っていく形式だった。誰がどこに座り、どんな人と話しているのかが、わりとオープンに見えていた記憶がある。
けれども今は、それぞれの会話がほかの参加者から見えないように工夫されているらしい。周囲の視線を気にせず話せるように、あるいは参加することへの心理的な負担を減らすために、少しずつ形が変わってきた様子。婚活パーティーも、自分が知らないうちにずいぶん進化していた。
それでも私は、「シングルマッチ」という言葉を聞くたびに、たぶんこれからもリングで対峙する戦う者たちを先に思い浮かべてしまう気がする。
Text / 池田園子
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