新しい物件を見るたび、今の家が好きになる

不動産情報を見るのが好きだ。Taroも好きなので、ときどき二人で賃貸情報を眺めながら、「ここいいね」「面白い家〜」などと喋っている。

18歳で実家を出てから22年。大学生の頃と一度の更新を除けば、だいたい2年おきに住まいを変えてきた。そのせいか、間取り図を見ながら、ここに住んだら……と想像するのが楽しい。

最近も気になる新築戸建て物件を見つけた。今の家より少し広く、同じ3LDK。新築だから中を見なくてもきれいさは想像がつく。Taroは浴室乾燥機が付いているのが気に入ったらしい。カビが生えにくくなる点が良い、と。

中心部から少し離れるものの、気になったので外観だけ見に行った。

建物はよかった。新しくて広くて、設備も整っている。ただ、周辺の環境がちょっと。決して悪くないけど、今の私たちには物足りない感じ。

今住んでいるエリアには、人が一人通れるかどうかくらいの細い路地があって、歩いていると昭和に迷い込んだような感覚になって楽しい。昔からある家と新しく建った家が混じり合い、近所の人とも自然に会話が生まれるのも特徴的だと思う。

一方、新築物件の周辺は、これから家が次々と建っていきそうな場所だった。きれいで暮らしやすそうではある。大通りも近く、日常の買い物には困らないだろう。でも、今ここで得られているような人とのつながりは、つくりにくいような気がする。

同じ日に、二条城の近くにある町家を改装した家も見に行った。そこには古くからの街並みがあり、昔から住んでいる人たちの暮らしがある。今よりさらに街なかで、飲食店もたくさんあることから、より楽しい生活になりそうだった。

「ここなら、今の生活に近そうだね。隣近所とも交流がありそう」

Taroとそんな話をしながら、やっぱり今の家と比べていた。

住み始めて1年5か月。それでも、隣近所には気軽に話せる人ができ、お互いの家を行き来するような関係も生まれた。道で会えば挨拶を交わす顔見知りもいる。距離は近いけれど、家と家の壁同士がぴったり密着しているわけでもない。今のところ、ここがいちばんバランスがいい。

もちろん、もう少し家賃が安ければありがたいし、新築のきれいさや浴室乾燥機にも心は動く。引っ越しから1年も経つと、荷造りや手続き、物の処分に感じた大変さは薄れて(いつもそうだ)、また間取り図を見ながら新しい生活を妄想している。

それでも、ほかの物件を見れば見るほど、最後には今の家に戻ってくる。結局この日も、「やっぱり今の家、トータルで考えるといいよね」と話して終わった。

私たちは、これからも物件情報を見続ける。そのたびに少し引っ越したくなって、そのたびに今の家のよさを実感するのだと思う。

Text / 池田園子

【関連本】『あるものでまかなう生活』

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