Netflixのオリジナルドラマ『ダウンタイム』が9月17日に公開され、9月20日に見終えた。8話あり、1話あたり約70分の長さにも関わらず、集中して見てしまった。美容医療業界の闇を描いた作品だと知り、かなり期待していたからだ。ここではまず全体の感想を書き、今後は論点別にいくつか記事を書いていきたいと思っている。
私は20代後半〜30代後半にかけて注入系・照射系の施術を何度も受けてきたし、特定の手術に興味を持って動いていた時期がある。以前の記事にも書いたように、2年ほど前には豊胸手術を受けたいと前のめりになり、いろいろと調べ、クリニックへカウンセリングに行ったこともあった。
今はしみ取り以外は興味がなく、最新の美容医療やトレンドはよくわからないけど、この分野について知識がないわけではない。だからこそ、この作品ではどこまで業界の問題を描くのだろうと思っていた。
『ダウンタイム』には、危険を説明されても理想の容姿を諦められない人、整形を繰り返さずにはいられない人、手術によって後遺症を負う人などが登場する。鼻に入れたプロテーゼが術後のケガをきっかけに飛び出したり、手術で失明したりと、起こり得る問題の一部が描かれていた。胸にシリコンバッグを入れた患者が救急搬送され、命を守るためにシリコンを取り除かれる場面もあった。

前半から中盤にかけて印象に残ったのは、手術そのものの描写だ。顔のどこに、どのようにメスを入れるのか、手術直後の腫れや傷がどのような状態になるのかも含め、特殊メイクで再現されたダウンタイムの姿はじっくり見入ってしまう。
「きれいになったあとの顔や身体」は広告やSNSでいくらでも見られる。でも、理想の状態になるまでの間、顔や身体に何が起きているのかをじっくり見る機会は、整形を受けた本人以外ない(美容整形が普及した昨今は、ダウンタイム中の様子を発信する人もいるから、画面越しには見えるだろうけれど)。その意味で、『ダウンタイム』というタイトルのとおり、新しい顔や身体へと変化していく過程で生じる傷や内出血の様子などを見せたところに引き込まれた。
一方で、私が期待していたほど深く描かれなかった問題もある。そのひとつが、医師免許取得後、初期研修(2年)を終えた若手医師が、専門科で十分な臨床経験を積まないまま、直接美容医療に進む、いわゆる「直美」問題だ。ここ数年、「直美」という言葉をニュースや動画で目にする機会も増えた。すでに問題の知名度が高くなってきたからこそ、この作品では、あえて強調しなかったのかもしれない。
華やかな「キラキラ美容外科医」のような人物は描かれるものの、経験の浅い医師がこの業界に流れていく仕組みにはそこまで踏み込んでいなかった印象を受けた。それがもたらす医療界全体の危機や、その状態を生む構造にまでは、なおさら触れていなかったように思う。
全8話のドラマである以上、業界が抱える問題をすべて描くことはもちろん難しいし、上記の問題が作品のテーマではないことも分かる。ただ、YouTubeには美容医療による事故や後遺症を扱った特集が各チャンネルで数多く公開されていて、そうした動画からは「こんなに怖い事例があるのか」と驚かされる。トラブルを幅広く知りたいなら、個別の事故や背景を掘り下げた特集のほうが、その深刻さや種類の多さを実感しやすいかもしれない。
ドラマは終盤(7・8話)になると、物語の中心がお家騒動のような方向へ移っていく。形成外科専門医が、メスを持つ手が震えたりこわばったりする(作中では「イップス」と表現されていた)医師に手術を頼むだろうか? もっと詳しく言うと、激しい交通事故で陥没した自分の顔の手術を、その医師に任せようとする場面だった。その辺からは、少しついていけなくなった。網羅的に業界の問題を描く作品だと、期待しすぎていたところもあるのだろう。
それでも前半から中盤までは、とても興味深い時間だった。次回からも論点別に掘り下げていきたい。それくらい、たくさんの「書きたいこと」をもたらしてくれる作品だ。
Text / 池田園子
【関連本】『Dr.高須幹弥が教える 美容整形の教科書』
「SAVOR LIFE」では、生活をより豊かにするためのアイデアや情報を発信しています。会員様限定のお知らせや限定コンテンツをニュースレターでお届けします。ご登録ください!







