
『文豪と犬と猫 偏愛で読み解く日本文学』は、日本文学を愛するふたりの作家(犬派の文芸評論家・宮崎智之さんと、猫派の文筆家・山本莉会さん)による往復書簡形式の評論集です。
夏目漱石、内田百閒、志賀直哉など、文豪たちが犬や猫をどのようなまなざしで描いてきたのかを、膨大な作品や書簡、証言などの資料から丁寧に読み解き、人と動物、そして文学のあいだに流れる豊かな情感を掬い上げています。文学好きにも犬猫好きにも響く唯一無二の作品だと感じ、本書を猫好きの友人ふたりに贈りました。
12名の作家が取り上げられるなか、ここでは「室生犀星+猫 人はいかにして猫に目覚めるか」に焦点を当てます。
室生犀星は明治22年に私生児として生まれ、幼少期に里子に出され、義母のもとで虐待を受けながら育ちました。厳しい環境の中でも、彼は自らの境遇を恨むことなく、小さなもの――たとえば猫のような弱くて愛おしい存在――に温かなまなざしを向けて生きた人でした。山本莉会さんはその生い立ちに触れながら、「犀星はとても“いいやつ”で、自らの家族や暮らしを大切に、文学と真摯に向き合い続けた」と記しています。
犀星の作品に登場する猫は、初期にはどこか不気味で不可思議な存在として描かれますが、晩年になるにつれ、猫は家族をつなぐ象徴のような存在へと変化していきます。火鉢のそばでリラックスした姿の猫と並んで座る犀星の有名な写真は、本書でも言及されています。
これらの素顔や批評はほんの一部です。『文豪と犬と猫』は、文豪たちの作品やエピソードをわかりやすく再構成しながら、彼らの“犬観”や“猫観”を浮かび上がらせています。どの章も知識と発見に満ち、読み進めるほどに日本文学への好奇心が刺激されます。そして、これほどまでに文学愛と犬猫愛にあふれた作品を世に送り出したふたりの著者に、敬意を抱かずにはいられません。
読み終えたあと、自分のそばで眠る猫をそっと撫でたくなるような、あたたかな余韻が残る一冊でした。
Text / 池田園子
【関連本】『文豪と犬と猫 偏愛で読み解く日本文学』
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