京都に来て初めて迎える新しい年に、『京都手帖』を買ってみました。この街で暮らすなら、まずは一年の流れを知ってみたいと思ったからです。
京都手帖には、京都で行われる行事が、お寺や神社の年中行事を中心に、日ごとにまとめられています。
ページをめくっているだけで、この街では一年を通して、本当にたくさんの行事が営まれていることが伝わってきます。
二月のページを見て、節分が二月三日、一日限りの行事ではないことに気づきました。前日の二日から、すでに各所でさまざまな節分祭が始まっているのです。
そのなかに、近所の「千本ゑんま堂 引接寺」の節分会の記載を見つけました。以前お隣のおばあちゃんから「ゑんま堂は節分に行くといい」と教えてもらっていました。

日中に足を運ぶと、境内にある引接寺会館では、狂言に関するパネル展示が行われていました。写真として展示されていた演目のひとつが『土蜘蛛』(※)でした。
驚いたことに、その展示のすぐそばには、『土蜘蛛』で使われる蜘蛛の糸を切る・投げる体験が用意されていました。

蜘蛛の糸は、和紙でつくられているそう。和紙を鉛に巻いたものを細く切り、それを束ねていきます。鉛が使われているのは、金属のなかでも柔らかく、切断しやすいから。

小さく丸めた和紙を十二個並べたものを三本、さらにそれを上下に配置して、合計六本分を束ねます。七十個以上の和紙の塊を束ねたものが、あの蜘蛛の糸になるのです。
『土蜘蛛』の見どころは、この糸を投げる場面にあります。白い糸が放物線を描いて宙に浮かぶ様子は、非常に華やかだと知られています。
体験の場では、熟練者と思しき高齢の男性スタッフが、まずお手本を見せてくれました。すると、そばにいた女性スタッフが「動画、撮りましょうか」と声をかけてくれました。
狙う場所の、その先を意識して投げてみると、白い糸がふわりと宙を舞いました。
舞台でプロが投げれば、これがどれほど美しく、迫力のある光景になるのか。その一端を、身体で理解した気がしました。
節分の行事に来たつもりが、伝統芸能の世界に触れる時間になりました。
「京都市公式 京都観光Navi」などを見ても、京都では毎日のように行事が紹介されています。この街では、行事と文化が、日常のすぐ隣にあります。
私にとって京都手帖は、予定を書くための手帳というより、行事を眺めるためのカレンダーであり、ガイドブックです。
ページをめくるたびに、京都という街の奥行きや、楽しみかたを少しずつ知っていく感覚があります。
今年はこの手帖を手がかりに、京都の営みを、自分の足で味わっていきたいと思っています。
※ゑんま堂狂言には大きく分けて二つの系統があり、『土蜘蛛』は能の影響を受けた、立ち回りが派手で勧善懲悪を描く「かたもん」の狂言として上演されている演目です。
Text / 池田園子
【関連本】『京都手帖2026』
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