妖怪である、という前提で

5月で40歳になります。数字だけ見れば立派な大人のはずなのに、中身は追いついていないと感じることばかり。

昨年から、大学生やひとまわりくらい年下の人と関わる機会が出てきました。初回は、少なくとも私のなかでは、わりといい感じに話せるんです。「あ、仲良くなれるかも」と思える空気がある。とはいえ、それはあくまで私の主観で、相手がどう思っているかはわからない。

実際、2回目につながることもある。しかし、3回目にはなかなか至らない。気づけば、そのままふわっと関係が途切れてしまうこともある。

会う約束をしていたのに、当日になって行けなくなったと連絡をもらったこともありました。

もちろん事情はいろいろあると思う。でも、ふと考えてしまう。「最初は、この人と会ってもいいかなと思ってくれた。でも当日になって、やはり気が進まなくなったのではないか」と。そう思うと、胸の奥がわずかにざわつく。

私は何を間違えていたのか。距離感が近いのか。それとも壁があったのか。楽しんでもらいたいと思って話していたつもりでも、どこかで「圧」のようなものが出ていたのかもしれない。

そう考えると、自分の未熟さが浮かび上がり、ちょっと落ち込む。

同時に、「ああ、まだまだ至らない」と感じるのです。40歳になろうとしているのに、人との関わり方やコミュニケーションが、どこかうまくできていない気がする。もう少し自然に、もう少し相手にとって心地よく関われたらいいのに、と思う。

そんなときに出会ったのが、斎藤充博さんの『生きることがラクになる これからのフリーランス』でした。

フリーランスとして活動してきた日々を、成功談だけでなく、うまくいかなかったことも含めて率直に綴ったエッセイ集です。仕事を「50%くらいの力で安定稼働させる」といった持続可能なあり方が、いまの自分にはしっくりきました。

本のなかで特に印象的だったのが、「若い人と接するときは、自分を妖怪だと思う」という比喩です。

若い人と自分は違う。前提も、感覚も違う。妖怪と人間くらい違って当たり前であり、価値観も言葉の受け取り方もずれていて当然。だからこそ「違う前提」で近づく。そのほうが相手を警戒させづらい、という考え方です。

私は妖怪で、相手は人間。なるほど、と腑に落ちる感覚がありました。それくらい別のカテゴリにいると捉えたほうが、かえって自然なのかもしれない。

若者に向き合うとき、40歳の私は妖怪である。そう腹の底で思っておくと、不思議と肩の力が抜けそうです。無理に近づこうとしなくてもいいし、わからない部分があっても、人間と妖怪だから仕方ないなと思える。それを前提にできるのです。

だいぶ、気持ちが軽くなりました。

斎藤さんは、若い人たちと気軽な飲み会を開いたり、「パフェ会」と称して昼間の1時間だけ集まって甘いものを食べる場をつくったりしているそうです。そうした関わりを重ねる中で、今度は若い人のほうから誘われることも出てきたのだとか。

それって、本当にすごい。若い人のほうから声をかけてもらえるというのは、安心感や心地よさが伝わっている証拠だから。

私も、そんなふうに関われる人になりたい。

そのためにも、まずは自分が妖怪であると腹落ちさせること。違いを前提にしながら、それでも相手にとって居心地のいい距離を探っていくこと。

少しずつでいい。人間のなかに混じった妖怪として、その距離を探っていけたらと思います。

Text / 池田園子

【関連本】『生きることがラクになる これからのフリーランス

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