一緒に暮らし始めると、ものが増える、というより、「判断に迷うもの」が増えるのだと思います。
もともと別々に暮らしていたふたりが、同じ空間で生活するようになると、「これは使うのか、使わないのか」という基準が、ひとつではなくなるから。自分にとっては不要でも、相手にとっては必要かもしれない。だからこそ、勝手に処分できない。そんな宙ぶらりんな存在のものが、キッチンの隅や棚の奥に、静かに残っていきます。
その中に、ひとつ、気になっていたものがありました。Taroが持っていた、ニトリで買ったという、ポリ袋を固定するための「ポリ袋エコホルダー」です。
世の中では「便利グッズ」として評価されているもので、ポリ袋を広げて固定できるだけでなく、グラスやペットボトルなどを最大4つ乾かすこともできる、なかなか優秀なアイテムのよう。けれど、私の生活の中では「これ、使わないな」と思っていました。
一度だけ、パンづくりで使ったことがあります。ポリ袋に材料を入れる工程のときに、袋を広げておくのにちょうどよくて、「あ、これは確かに便利だな」と思いました。ただ、パンづくりは毎日のようにするものではありません。結局、その後はまた、キッチンの片隅で待機する存在に戻っていました。
そんなある日、ふと思い立ってお菓子をつくることに。お菓子づくりは不慣れで、必ずレシピ本を見ながら進めます。ページを開いたままにしておきたいのですが、いつもはその辺にある瓶や何かしらの重しを使って、なんとか固定していました。でも、それが意外とうまくいかない。重さが足りずに倒れてしまったり、ページがぱたんと閉じたりと、ちょっとしたストレスがありました。
そのとき、ふと、そのスタンドが目に入ったのです。
「これ、使えるんじゃないか」と。
レシピ本を挟んでみると、ページが固定されて、見やすい。倒れない。余計なストレスがない。「あ、これだ」と思いました。
もしかしたら、この商品の開発者は、そんな使い方も想定していたのかもしれません。でも、少なくとも私は、自分の生活の中で、その使い方を「発見した」という実感がありました。
使わないと思っていたものが、ある日、確かに役に立つ。その瞬間は、なんともうれしいものです。
もちろん、すべてのものに無理やり役割を与える必要はないと思います。手放したほうがいいものも、あります。でも、自分のものではない「残っていたもの」が、ふとしたきっかけで「使えるもの」に変わることもあるのだと、今回感じました。
専用の道具をわざわざ買わなくても、すでにあるもので足りることがある。むしろ、そのほうが、愛着が生まれる気もします。
キッチンの隅に佇んでいたあのスタンドは、いまでは、レシピ本を支える小さな相棒になりました。
ものの価値は最初から決まっているのではなく、使う側の気づきによって、あとから更新されていく場合もあるのだと思います。
Text / 池田園子
【関連本】『消費デトックス』
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