御恩と奉公

あなたの職場は、良い職場だろうか。
やりがいを感じ、納得できるだけの給料をもらい、上司や同僚にも恵まれ、9時から17時で働き、土日祝日は休み。そんな理想的な職場なら、それでいい。

だが、そんな話は滅多に聞かない。こんにちは、Dr.Taroです。

クリニックで働けば、院長に言えない不満を勤務医に漏らしてくる患者がいるのは当たり前だった。社会人になって20年近く、職場の不満や不協和音を聞かない年はなかった。揉め事の末に辞めていく人間もいれば、辞める決断すらできず、恨みを募らせながら働き続ける人間もいる。そして組織はそんな職員を煙たがり、職場環境の改善などおざなりになるのが常だった。

いま自分が働く場所も例外ではない。サービス残業は当たり前、待遇改善の声を上げれば「経営的にはトントンなので予定はない」と朝礼で突っぱねられる。特に問題なのは、経営がどの程度改善したら給料が上がるのか、その目安さえ明示されないことだ。コロナ禍で患者が減り給料がカットされたが、患者が戻っても給料は戻らない。この状況が続くなら、気骨のある職員から辞めていくだろう。

残された者たちは、経営者には不満を隠し、笑顔の仮面をかぶって沈没船の座席争いに励むか。あるいは沈没するとわかった時点で飛び降り辞職するかの二択になる。

だが、組織側は沈没船とは思わない。医療機関の廃業率は1%未満。税制優遇も手厚く、不満があるなら辞めてくれて結構というスタンスなのだ。待遇も横並びで、どこも似たようなもの。誰かが辞めても新しい求人を出せば埋まると踏んでいる。トカゲの尻尾切りのように、従業員を入れ替えて終わりという発想だ。

とはいえ、入れ替え続けた結果、従業員の質は確実に低下していく。開業当初と比べて人材のレベルは下がったのではないかと問いを立てれば、おそらく否定できないだろう。だが、危機感は薄く、改革は遠い。

一方、労働者もまた同じ穴のムジナなのかもしれない。作り笑いで時間が過ぎるのを待ち、サービス残業も当たり前。労働環境の交渉もせず、辞める勇気もなく、結局、現職にしがみついている。転職サイトを眺めながら、条件がよければ逃げようと考えるだけ。今この瞬間は現職にしがみつく方が安全だと自己暗示をかけているに過ぎない。

組織も労働者も、同じ構造だ。求人広告を出せばすぐ誰かが来るとタカをくくる組織。良い職場が見つかればいつでも辞めるとスマホ片手に求人を見る労働者。どちらも、同じようにスマホの求人情報に目を光らせている。

この構造は、マッチングアプリに似ている。マッチングしてカップル成立。しかしその手には、常にスマホがある。「もっといい人がいるはず」とパートナーの隣でマッチングアプリを開き続けるのと同じだ。

自分という存在は唯一無二なのか。否、現代の職場では入れ替え可能な歯車でしかない。

自分の職場を改めて見つめてみよう。あなたは唯一無二の存在として認められているだろうか。歯車ではないと、誰かが証明してくれているだろうか。
我々はただの駒ではない。血が通い、感情を持ち、怒りも抱える存在だ。不条理に耐え続ける理由はない。現状を変えるために行動する力を持とう。
月から金まで働いているなら、土日に何かを始めよう。このまま年齢を重ねて後悔しないだろうか。そう思うなら、今日から何かを変えるべきだ。今が一番若いのだから。

Text / Dr.Taro

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