人はときどき、自分で掘ったトンネルの中で立ち止まる。

前にも後ろにも進めなくなって、光が見えないと言う。
でも、よくよく話を聞いていると、本当に光がないのかはわからない。
ただ、その場にとどまるという選択をしているようにも見えることがある。
ぐちゃぐちゃに絡まった糸のような悩み。
優先順位がつけられない。
どれも大事で、どれも失いたくない。
けれど、すべてを同時に手に入れることはできない。
「あちらを立てればこちらが立たず」というように、何かを選ぶことは、何かを選ばないことでもある。
変えたい、と言いながら。
でも失いたくない、とも言う。
その揺れの中にいる人に出会うと、私はひとつの問いをそっと差し出す。
――何を守りたいの?
絶対に手放せないものは何だろう。
それは本当に、いま守るべきものだろうか。
それとも、怖くて握りしめているだけだろうか。
守りたいものがあるなら、それを守ればいい。
踏み出さないという決断も、立派な選択だ。
でも、新しいものを手に入れたいなら、いまの何かは変わる。
リスクもあるし、失う可能性もある。
それでも前に進むかどうか。
そこを決めるのは、やっぱり本人しかいない。
トンネルから出るか、出ないか。
出たくないなら、まだそこにいてもいい。
それは弱さではなく、準備が整っていないだけかもしれない。
でも、出ようと思えば出られる。
出口は、誰かがつくるものではなく、自分で向きを変えたときに見えてくるものだから。
悩みの中にいるとき、人は「どうしたらいい?」と答えを探す。
けれど本当は、選択肢はもう見えていることが多い。
ただ、選ぶのが怖いだけだ。
どの道を選んでも、正解かどうかはあとからしかわからない。
私はその人ではない。
見えている景色も、抱えている事情も違う。
一方の話だけで、答えを出すことはできない。
求められれば考えは伝える。
でも、決めるのは本人しかできない。
だから私は、問いを渡す。
――あなたは、どうしたいの?
――守りたいものは何?
――手放してもいいものは何?
選ぶのは、その人自身だ。
自分で選べることを思い出したとき、ふっと我に返る。
悩みがなくなるかどうかは、わからない。
ただ、自分で選んでそこにいるのかどうか。
それだけで、見える景色は変わる。
Text / 池田園子
【関連本】『「なりたい自分」になるシンプルなルール』
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