“ねじれ”を直したら、買わなくてよくなった

「これ、わかる人いるのだろうか」と思いながら書いているのだけど、ノンワイヤーブラ、とくにカップが取り外せて中央が紐でつながっているタイプを使っている人なら、「ああ、それね」と頷いてくれる気がしている。

洗濯機から取り出したあと、ブラの中でカップがぐるんぐるんにねじれている、あの現象。あれはもう、軽いホラーである。本来、カップには上下がある。下は厚くて胸を支える係、上は薄くて自然な丸みをつくる係。なのに気づけばその上下が入れ替わり、しかも中央の紐まで「そんなに?」ってくらい何周もねじれている。誰がそんな芸術的なことしたの、と問い詰めたくなるが、犯人はだいたい洗濯機と私である。

私は長いことこれを放置していた。というか、気づいていなかった。「ちょっと着け心地が悪い気がするな」と思いながらも、「まあいいか」で済ませていたタイプの人間である。悲しきかな、胸の存在感が控えめなので、とりあえず着けていればいいでしょう、くらいの温度感で生きてきた。

ただ、あるときふと、その「なんか変だな」が引っかかった。たいした違和感ではないのだけど、無視しきれない程度には気になる。何が違うんだろう。

そういえば、と思い出したのが、ユニクロのエアリズムのノンワイヤーブラだった。以前に1枚だけ買っていて、たまに使っていたのだけど、あれはカップが内蔵型で、そもそもねじれない。洗濯しても無傷で帰ってくるカップ。あのときは「楽だな」くらいにしか思っていなかったのに、改めて比べてみると、その差がやけに気になった。

なぜ手持ちのブラは、こんなにもなんか微妙なのか。一回、真剣に見てみよう。そう思って、人生で初めて、ノンワイヤーブラのカップを取り出した。

結果、軽く衝撃だった。いや、軽くじゃない。普通に事件だった。まず、取り出すのが思ったより簡単。そして、ねじれ具合が思ったより深刻。紐は何周もぐるぐる巻きで、カップの向きは完全に逆転。「いや、どんな洗濯したらこうなるの?」と自分に聞きたいレベルである。ここまで放置していた自分に少し引きつつ、とりあえず向きを正して、整えて、戻してみた。

そして着けてみたら——めちゃくちゃ快適だった。いや、知ってる。正しい状態なら快適なことくらい。でも体感すると「え、こんなに違うの?」となる。今までの「なんか微妙」は、ただのねじれだったのだ。

その瞬間、買う気がスッと消えた。あんなに「いっそ全部、内蔵型にした方がいいのでは」と思っていたのに、「いや、今はいいや」となる不思議。だって、今持っているもの、いいから。色も好きだし、デザインも気に入っているし、2024年に買ったばかりで、全然まだ現役。問題はモノではなく、完全に私の管理能力だった。むしろ、ねじれたまま使っていた過去の自分に「ごめんね」と言いたくなるレベルである。

最近読んでいる本の中でも、似たようなことが何度も出てきた。「今あるものを見ること」「すでに持っているものを大切にすること」。不思議なくらい、どの著者も口を揃えて同じことを言う。そんなに続けて同じ話に出会う? と思いながらも、こういうときはたいてい、自分に必要なタイミングなのだろうと思う。

今回の一件で、それが妙に腑に落ちた。

新しく買う前に、今あるものを見る。ねじれているなら、直せばいい。それだけのことだったのに、見ないまま「なんか違うかも」と、安易に買い替えようとしていた。

今、ノンワイヤーブラは4枚ある。ローテーションとしては十分すぎる枚数だ。だから、もうしばらくは買わない。もしまたねじれたら、その都度ちょっと整えればいい。何周もねじれる前に気づけばいい。それだけで済む話だった。

買う前に、見る。直せるものは、直す。それだけで、「なんか足りない気がする」という気持ちは、案外あっさり消える。

あのときカップを取り出した自分を、わりと本気で褒めている。たかがブラ、されどブラ。ねじれをほどいただけで、生活がちょっと整うのだから。そう、けっこう、シンプルにできている。

Text / 池田園子

【関連本】『今あるものに気づきなさい

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